新装版 坂の上の雲 (3) (文春文庫) (文春文庫 し 1-78)

著者 :
  • 文藝春秋 (1999年1月10日発売)
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4

【あらすじ】
日清戦争から十年・・・
じりじりと南下する巨大な軍事国家ロシアの脅威に、日本は恐れおののいた。
「戦争はありえない。なぜならば私が欲しないから」とロシア皇帝ニコライ二世はいった。
しかし、両国の激突はもはや避けえない。
病の床で数々の偉業を成し遂げた正岡子規は戦争の足音を聞きつつ燃え尽きるようにして、逝った。


【内容まとめ】
1.明治には、国民所得の驚くべき低さという宿命的な暗さが付きまとう。
2.ロシアと日本の戦争に対する準備は正反対。「Giant Killigno」の理由は準備の怠りと相手の軽視
3.この頃の人物たちは、当たり前だが「武士道」や「反骨精神」を心に持って生きている。


【感想】
ようやく物語は日露戦争に突入!
しかし、今はまだ8分の3巻しか終わっていない・・・
この物語はこの後どう続くんだ?
長い。長すぎる!
長いのは良いけど、わき道にそれてばっかりじゃキツイぜ?!笑

上記にもあるが、この頃の日本人はしがみ着く思いを持って外国に対峙しているように思える。
負けるかもしれない、でも祖国のために負けるわけにいかない。
そんな緊張感と焦りを持ちつつ、現実から決して目を背けずにこの無謀な戦いに挑んでいる。

それに比べ、今の日本はどうなのか?
何故か高飛車な態度で生きて、中国やアジア諸国にツバを吐きつつアメリカや欧米国にはヘイコラよろしくやっていて、謙虚というよりもはや卑屈な態度で日々生きている人が多い。
時代が変わって人が変わるのは仕方ないとは言えども、こんな世の中になるために昔の人は血を流したのか?
この頃の人間が今の日本を作る為に奔走したことを思うと、今の自分たちを見ると、どう思うだろう?
日本人である事に些かの情けなさすら感じてしまうな・・・

話が逸れたが、、、
戦国モノと違って近代の戦争はスケールが大きい!
1人の力や戦略ではなく、色んな策略・謀略に富んでいて、面白い!
が、文字で読むのが難しい!!笑

これは小説で読むにはもう少し根性が要るな?
あと5巻!楽しみだぜ。


【引用】
p9
「秋山の天才は、物事を帰納する力だ。」
あらゆる雑多なものを並べてそこから純粋原理を引き出してくるのが真之の得意芸。
熱心さも度はずれたもので、「一生の大道楽」と人には言っていた。


p42
明治28年に日清戦争が終わり、1年間の総支出は9160万円ほどだった。
しかし、翌年明治29年は当然民力を休めねばならないのに、総支出は2億円あまりである。
軍事費が占める割合も、32%→48%に。
明治の悲惨さはここにある。
我々が明治という世の中を振り返るとき、宿命的な暗さが付きまとう。
つまり国民所得の驚くべき低さがそれに原因している。


p68
要するに、日露戦争の原因は、満州と朝鮮である。
日露戦争にもし日本が負けていれば、朝鮮はロシアの所有になっていたことは疑うべくもない。

ただ、日本は海ひとつへだてているために、所有まではされなかったに違いない。


p96
・ロシア陸軍大佐ワンノフスキーの日本観
「日本陸軍がヨーロッパにおける最弱の軍隊水準にまで辿り着けるだけの道徳的基礎を得るまでに、あと100年はかかるであろう。」
日本陸軍の装備や作戦能力ではなく、軍隊道徳的について論じている。
当時の日本軍隊において過剰すぎるほどの要素は忠誠心と服従心でしかないのに、そのごく明白な事実すら、観察する能力を欠いていた。

またこのワンノフスキー報告が、その後のロシア軍部の日本観の基礎となった。
→ロシアは日本をクソ舐めてた


p139
好古の日記
「ロシア帝国というのは、外交ひとつにしても嘘が多くて、何をしでかすか得体の知れぬ国であるが、しかしロシア人はその国家とは全く違った好人物だけである。
特に酒宴でのロシア人の気分のよさは、世界一かもしれない。」


p180
・戦前の日露間の外交について
劣等民族である黄色人種へのサディスティックな外交は、この時だけでなく太平洋戦争やむしろ現代でもくすぶっているのでは?
日本が調子に乗っちゃいけない、今もなお白人たちは劣等民族と思っている。

日露戦争というのは、世界史的な帝国主義時代の一大現象。
窮鼠猫を噛むかの如く、追い詰められた者が生きる力ギリギリのものを振り絞ろうとした防衛戦であった。

そんな用意周到な日本に対し、ロシアの準備不足は日本を舐めてかかりすぎたから。
大東亜戦争では、日本はこの頃の気持ちを忘れてやや哲学的に作戦を立てすぎていた。


p317
「これが、日露騎兵の第1戦なのだ。
常に最初の戦いが大事であり、ここで負ければ日本の騎兵の士気に影響し、悪くゆけば負け癖がついてしまうかもしれない。
ここで退却すればロシア騎兵に自信をつけさせ、今後の戦闘で彼らはいよいよ強くなるだろう。」
戦術的に退却が妥当であることはよくわかった上で、この局面この段階での退却が全てを失う事になることを案じていた。

「旅団長閣下が、最前線の機関銃陣地で不貞寝をしている。」

「もう戦闘は1時間半も続いている。
敵がやがてくたびれるはずだ。」
とにかく自分や兵隊の体がちぎれようと吹き飛ぼうと、この現場から退かないというのが、好古の唯一無二の戦法だった。

戦場での司令官は、あまり鋭敏であってもいけない。
反応が鋭敏すぎると、かえって事を誤る。
こういう極所には、わざと鈍感になるしかなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2017年12月19日
読了日 : 2017年12月19日
本棚登録日 : 2017年12月19日

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