三部の最後までネタバレしてるので注意!
通勤時間にちまちま読む私には超大作すぎるけど、その分すごく面白かった。
万葉の見る神話の世界にぐっと引き込まれ、
毛鞠の突き抜ける衝動と喪失の歴史に踏み潰され、
一部・二部に対して比較的軽く、二部の喪失から癒えてきた傷口をさらっと爽やかにグリグリされる瞳子の三部。
視覚的にずっと美しい。
鉄砲薔薇と箱の渓谷や、曜司の乗るお座敷列車が浮き上がるシーンは、死にまつわることなのに美しすぎる。
桜庭一樹は生きている人間はもちろん、死んでゆく人間も美しく書き上げてくれるから信頼と愛を捧げたい。
最高。最高で最高に辛い。
泪がすごく好きだったので生まれると同時に作中での死が確定して、亡くなるまでずっとしんどかったし、
いざ死ぬと喪失感がすごくてそのあと泪の話が出てくる度に静かに本を閉じて休憩した。
最後に瞳子のことを抱きしめる三城の気持ちを考えるとつらい。
男に生まれてしまったが故に三城と結ばれる未来を選べず、自死してしまったかもしれないかつての友人(まぁおそらく恋人)の泪とそっくりに生まれた女の子の瞳子を、泣いている瞳子を抱きしめるなんて……。
優しいな三城は。
女に生まれていたら、って泪はきっと1度は思っただろうな…………。
しんどい。
そして豊寿さんも好きだったのに……そんな……ってなる。
友人の枠からはみ出ないように節度を持って万葉に接する豊寿が大好きだったので、死ぬなんて……。
この作品に出てくる男たちはみんな魅力的すぎる。
女たちももちろん魅力的なんだけど、男たちに狂わされる。
瞳子の今の自分に対する評価とか、未来への不安は共感できるところがあって最後の「ようこそ」は、瞳子を含む生まれた人間たちに対する歓迎の言葉。
瞳子とは違う種類だけど、三城もまた傷と不安を抱えて生きていくしかないのだ……。
今生きている私たちと同じように。
- 感想投稿日 : 2022年11月5日
- 読了日 : 2022年11月5日
- 本棚登録日 : 2022年10月5日
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