風に舞いあがるビニールシート

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年5月31日発売)
3.58
  • (279)
  • (485)
  • (759)
  • (74)
  • (19)
本棚登録 : 2979
感想 : 575
3

6編の短編からなる短編集。最初の「器を探して」「犬の散歩」を呼んだ後、「風に舞いあがるビニールシート」までとばしてしまった(正直あまり刺さらなかったので)。
ただ、「風に舞いあがるビニールシート」には考えさせられた。難民問題に向き合う夫とその夫を心配し、2人で平和に暮らしたいと願う妻。
『私は富める国に生まれた大多数の人たちと同様、貧しい国の惨状から目を背けているだけだ。』
『ああ、やはりこの国は平和でいい。平和ボケ万歳だ、望むところだ。平和ボケは美しい。ボケでもなんでもすばらしい。どうかこの美しさが、すばらしさが永久に続きますように。』
日本で暮らしている自分も当然「富める国に生まれた大多数の人」。教科書やテレビなんかでは見るけど、本当は見ようともしていない貧しい国の惨状。そんな平和ボケしたすばらしい世界…。
最後の最後で、妻は夫が死んだアフガンへ行きたいと志願する。夫の人格を形成した幼少期の環境や、それを知らずにおり、死後に知った妻にどんな心情の変化があったのか、思わず考えてしまう。

想像以上に惨い苦しい世界があることを知った上で、日本にいる私たちはしっかりと平和ボケして、平和ボケした世界をちゃんと「すばらしい」って言っていかなきゃいけないな、と思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月10日
読了日 : 2024年3月10日
本棚登録日 : 2024年3月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする