山へ行く (小学館文庫 はA 46)

著者 :
  • 小学館 (2016年3月15日発売)
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感想 : 6
3

・先日「私の少女マンガ講義」新潮文庫で読んだ「柳の木」以外は初読。
・タイトル……谷口ジローっぽかったり、藤子・F・不二雄っぽかったり。
・誰が誰とどういう関係性で、という人物関係がセリフで執拗に説明されるのがちょっとまだるっこしいな、と近年の萩尾望都作品を読んで思っていたが、考えてみれば各編がたった数十ページ、ということは雑誌では読み切りだろう。一篇で独立させるには必要な配慮なのでは、と思い直した。
・わちゃわちゃしているだけでなく、孤独というテーマが貫かれていることが端々に見える。
・70年代当時に萩尾望都の熱狂的ファンになって人生ずっと追ってきた読者と、新たに出会うかもしれない若い読者と、どちらを対象にすべきかと言われたら前者だろう。
・「月刊flowers」という雑誌は不勉強にして知らないが、読者層は比較的高めなんだろうな、と公式HPをちらっと見て感じた。
・どういう作家性か、だけでなく、どういう掲載誌でどういう読者層なのか、まで視野に入れて把握できるようになりたいものだ。
・発表は2006年から2011年3月……また意義深い年月だ。

■山へ行く 16p
中年男性の孤独……判るっ。

■宇宙船運転免許証 16p
いかにも藤子・F・不二雄のヨドバ氏を思い出すが、実は失くした弟の代わりに免許を更新という、結構哀切な。

■駅まで∞(ムゲン) 16p
このへんで生方(うぶかた)先生のゆるやかな連作であることが判る。

■あなたは誰ですか 16p
と、思いきや生方先生ではなく、五十嵐さんが共通する登場人物だ、と修正。
萩尾望都もこういう人物を描くのが安心するんだろうな。

■くろいひつじ 16p
「山へ行く」が静かな孤独とすれば、本作は表面的には静かかもしれないが内に秘める孤独はここまで至る……強烈。
作者が周囲の誰かに向けて描いた強烈な毒素なのかもと想像したりもする。

■ビブラート 40p
ドッペル→2か月のズレ。ジュブナイル。

■柳の木 20p
涙腺刺激作。

■青いドア 16p
この「向こう側へ行きそうな人」、たとえば「メッシュ」なら強烈に行き過ぎて刃傷沙汰になりかねないところ、この程度に落ち着いてタハハ……という、すれすれの怖さ。

■世界の終わりにたった1人で 73p
再度生方先生が視点人物になって。
狂老女、タンゴ、と来れば条件反射的に藤沢周「ブエノスアイレス午前零時」を連想してしまう。

■ゆれる世界 16p
萩尾センセー「バタフライ・エフェクト」でも見たんかな。

■春の小川 50p
「喪の仕事」特に母の死を扱ったものは辛い……。母と一緒の布団の温もりが忘れられないとは……辛いし、生きる糧になるし、両義的すぎて。
さらに千田雄二(生方先生の義理の弟)が出ることで、ゆるやかな連作としてのまとまり。

◇エッセイ―ここではないどこかではなくて、ヨカッタ:石飛幸治(俳優)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2021年9月27日
読了日 : 2021年9月27日
本棚登録日 : 2021年9月23日

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