村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)

  • 新潮社 (1998年12月25日発売)
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いわばふたりとも完璧に「上がった」人。「もはやもがく必要がない」。親しみやすそうと思わせながら存分に権威を享受している。
と、皮肉な目線も持ってしまうが、結構示唆的な対談。
というか春樹論はかなりこれがベースになる。
「春樹自身による春樹認識」として。

源氏物語、漱石、大江健三郎、村上龍、と日本文学の流れを着実に意識している。
アフォリズム、デタッチメント、コミットメント、と自身を細分化するなんて、暗中模索の作家では不可能で、かなり意識的に描き続けてきた作家だ(それが石原千秋いわく自己神話化)。
「ねじまき鳥クロニクル」は受け入れられるの時間がかかる、というアーティスト的な言い方をしているが、自身で深めていくのに時間がかかる、自分はこのテーマを続けていくという表面でもあるだろう。
小説のよさは、対応性の遅さと、情報量の少なさと、手工業的しんどさ(あるいは個人的営為)だ、という。まさにそのとおりとひざを打つ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 別格3(春樹 龍 皆川博子 赤江瀑 らも 津原)
感想投稿日 : 2019年6月16日
読了日 : 2014年1月2日
本棚登録日 : 2014年1月2日

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