アルファベットのAからZまでの言葉を並べ、1つの恋愛の始まりから終わりまでをたどる。
主人公は35歳の女性で、働き盛りの文芸書籍の編集者。同業者の夫には愛人がいて、自分にも年下の恋人がいる。どろどろぐちゃぐちゃ、もしくは安っぽい絵空事のドラマになりそうな特殊な設定だが、これほど嫌味なくさらりと書けるのは、作者ならではだろう。
何より主人公のキャラクターが魅力的。
恋愛も仕事も夫婦関係も、常に純粋にいいものを追い求める。世間一般の形式的な枠には収まらずに突き進むところは、大人なのか子どもなのか。夫が愛人と別れたら、バランスが崩れてしまうのも、妙に納得できた。
作品全体には、山田詠美ならではの物事の本質をつく言葉があちこちに散りばめられている。漠然としか理解できていない様々な思いを、相変わらずずばりと表現してくれるところが小気味よい。
ただし、これは子どものいない夫婦だからこその関係だ。こういう生き方を否定はしないけれど、一般人の私は主人公のように生きたいとも思わないし、こんな夫婦でありたいとも思わないな、やっぱり。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
や行
- 感想投稿日 : 2016年3月15日
- 読了日 : 2016年3月15日
- 本棚登録日 : 2016年2月4日
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