内なる情熱を秘めた福沢かづが政に踊り商に踊り、やがて宴のあとが訪れる。冒頭のやや静謐で穏やかな雪後庵での幕開けから、都知事選での山崎の清廉潔白の希求に反してかづが先陣を切った革新党の泥臭い地を這う戦術と神輿は問わない保守党の物量作戦が対照的で本作品に華を添える。三多摩地区での敗戦を聞いたときのかづの事切れ、この描写に三島由紀夫氏の心情描写の素晴らしさを感じる。最後の最後に、墓ではなく雪後庵に執着するかづに、女性が備える本質的強さを思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2021年3月9日
- 読了日 : 2021年3月9日
- 本棚登録日 : 2021年2月13日
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