新参者

著者 :
  • 講談社 (2009年9月18日発売)
4.05
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本棚登録 : 11428
感想 : 1383
4

加賀恭一郎シリーズ 日本橋第一作。
加賀というと思わず阿部寛の顔が瞼に浮かんでくる。

巻末の初出から見ると五年間にも及ぶ連作短編集ということらしい。
一作が僅か40P弱の短いものながら、一人一人のキャラが明確で、起承転結と落としどころをしっかり抑え結末まで持っていく。
一章ごとに独立した短編に、様々な太さの糸を複雑に絡ませ、伏線を張り巡らせながら、最後の九章でその糸が解けると殺人犯が解明されるという筋立て。
その全体の構成と流れが秀逸である。

さらには、煎餅屋、料亭、瀬戸物屋、時計屋、民芸品屋などで働く人物の姿を詳細に描くことで、人形町や小伝馬町界隈の人情味溢れる雰囲気も見事に醸し出している。
それぞれの登場人物やストーリーのどこにも無駄が感じられない。
小説の作り手として見事な腕前だ。

東野圭吾ってこんなに短編上手だったのかとあらためて思い知らされた。
彼の作家としての技量の凄さを垣間見せる名作と言って良いだろう。
第一章ともなると十年近く前に書かれたことになるのだが、やはり気合を入れて書いた作品は違う。
東野さん、「いきなり文庫」なんて無理はやめて、これからも気合を入れた作品を書き続けてくださいな。

話は変わるが、こういった連作集はきちんと書籍化されてから読むに限るね。
2004年八月号の「小説現代」で初めて第一章の「煎餅屋の娘」が発表されたのだが、第三章の「瀬戸物屋の娘」と第四章の「時計屋の犬」の間なんて、まるまる二年以上も空いているんだよ。
物語がまだ序盤で、その後の謎解きの展開は全く予想がつかないので、そんなに待たされたら「次はいったいいつ出るんじゃあ・・・・・・」と叫びたくなるもんなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 東野 圭吾
感想投稿日 : 2013年12月11日
読了日 : 2013年12月11日
本棚登録日 : 2013年12月11日

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