メディア論―人間の拡張の諸相

  • みすず書房 (1987年7月1日発売)
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感想 : 41
5

メディアとは一体何なのか、その根源を語った本

目次
<blockquote>メディアはメッセージである
話されることば―悪の華?
書かれたことば―耳には目を
数―群衆のプロフィール
住宅―新しい外観と新しい展望
貨幣―貧乏人のクレジット・カード
漫画―『マッド』―テレビへの気違いじみた控えの間
写真―壁のない売春宿
新聞―ニュース漏洩による政治
広告―お隣りに負けずに大騒ぎ〔ほか〕</blockquote>
なんとか読み終わりました。
前半は総論、後半はメディアごとの各論となってます。

「メディアはメッセージである」という有名な言葉が載った本ですね。
そのぶん、難しいです。物凄い難しいです。よっぽど本を読みなれた人でないと難しいです。
そのために、あまり読んでくれと推奨はしません。

<blockquote>すべてのメディアが人間の感覚の拡張であるが、同時にそれは個人のエネルギーに課せられた「基本料金」でもある。それはわれわれ一人一人の意識と経験をまとめあげる。</blockquote>
「メディアはメッセージである。」
この言葉の意味は、意を示すのは、中身ではなく、メディアそのものなのだという事。
そして、メディアは、人間の感覚の拡張であり、意を示すのにメディアを使っているのだということ。
他の書評であった例として、メールと直接の対話をあげている。
人間は知らず知らずのうちに、何を使って表現を行うかで、随分違ったメッセージを出しているんだな。
メールなどの言葉では、冷たい感覚を持ってしまう。それは直接の対話ではそぎ落とされた情報がそうさせてしまうのだけど、伝えたい言葉自体は、どちらも同じものだったりする。
そこからも、何を使って伝えるかで変わる……この本ではこう言ってたりする。

もう一つは、熱いメディアと冷たいメディア。
<blockquote>熱いメディアとは、単一の感覚を「高精細度」(high defnition)で拡張するメディアのことである。「高精細度」とは、データを十分に満たされた状態のことだ。写真は視覚的に「高精細度」である。漫画が「低精細度」(low defnition)なのは、視覚情報があまり与えられていないからだ。
(中略)
したがって、熱いメディアは受容者による参与性が低く、冷たいメディアは参与性あるいは補完性が高い
</blockquote>
これは情報量の差をまた別の面から見た言い方なのかな。
ただ、分け方が独特で中には「?」と思うものもあるので、それは置いておこう。

しかし、これ以外にもこの本独特の理論が多用されていて、それが理解を難しくしている。
特に根源に位置しているのは、文字文化と口踊文化の違いだろう。それと「外爆発」と「内爆発」。
説明するのが難しいのだけど……。
文字と声の違いは特にその性格が大きい。これもメディアはメッセージであり、文字は冷たく、声は熱い。なんか本文から行くとごちゃごちゃになるんだけどね……。そして文字は反復性があり、そこに強みがある。一方声は反復性が無い。文字によって文化は変わっていった……という感じかな。
そして、文化が拡張して行く様子は「外爆発」であり、統合していく様子は「内爆発」である。

これでざっと理論は追えたと思う。新しいテクノロジー、かつて存在した文化、人間の歴史の中ですべてはこれを持って変化してきたのだ……ということなんだろうな。

マクルーハンのおっさんの言い分はわからんでもないが、まだ粗の目立つ言い分だから、うまく使わないとごっちゃになる。そこは気をつけなきゃいけないのかな……。
この本では、各論として、テレビやラジオ、映画に電話、ゲームに広告、新聞、写真……そこまではいかにもなメディアだが、貨幣や住宅、衣服、車輪、兵器……そんなものまであげられている。

世の中の変化をそれぞれ微妙な言葉の言い回しで説明してるけど、それも……なんか目くらましのような気がしないでもない。
ただ、それぞれの理論はツールとしてうまく使える。これからの変化に対しても、それを思えば、どっちの方向に行っているのかはわかるのかもしれない。拡張しているのか、統合・収縮しているのか……、データが豊富なのか、シンプルに削ぎ落としているのか……メディアはいつでもその時代にあった人間の拡張部分として存在しているんだろうな……。コンピュータもそうだし、ケータイもそうだし。

根っこの話をすると、当たり前に思えるようで、意外と自分たちがわかっていない話だったりする。それは無意識に当たり前にやってることだから、意識的に理論的に語ろうとすると、声が出ないんだな。
わざわざそういうことをしてなかったし、そう考えてみたこともなかったから。でも、わかってる人は、それゆえに、今のメディアがどっちに向いているか、何のメディアがどうなっているのかを、まぁ、わかったうえで次の仕掛けをやってるのかもしれないな。多分感覚的な理解なのかもしれないけど。

▽参考図書
・<a href="http://mediamarker.net/u/kotaro/?asin=4414302854" target="_blank">プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く
</a>

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年5月1日
読了日 : 2009年6月20日
本棚登録日 : 2019年5月1日

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