「気にせんでももとよりここは鬼の棲家 火の玉みたいに傲慢で気の強い人間しかおらんのにな」
あたたかくも棋士の厳しい勝負の世界を象徴するような一言で好き。
宗谷と隈倉の名人戦も見所。インタビューでは淡々としていた隈倉が壁を蹴破っていたシーンもいい。零だけじゃない。飼いならせない内なる獣とともに皆、戦っているんだ。
島田への心ない言葉に腹を立てた後藤。
「リングに上りもしねーで野次だけ飛ばすヤツを見ると虫唾が走るんだよ」
己の獣と向き合えないと、人は外に攻撃してしまうのかなと感じた。
後藤に対する零の複雑な感情。そして、読者としても後藤と香子の関係性を見て、印象は変わってきた。一筋縄ではいかないね。まさしく「混沌だな」。
零の心にのしかかっていた学校への思い。
「何かこう『思いがけないモノ』が入って新しい味が生まれるのもいいな」
この言葉通りの放課後将棋科学部(将科部)のエピソードもよかった。お互いの宝物を交換し合うような。あのラムネの味は忘れられないだろうな。
そして、その一方で学校という同じ場所で、ひなたに影をおとす事件が。
「後悔なんてしないっ しちゃダメだっ だって私のした事はぜったいまちがってなんかない!」
ちほを救えなかったひなた。しかし、この言葉は過去に孤立していた零のことを救った。この世界には手を差し伸べてくれる人もいるんだと。
重く深いこのテーマをどう掘り下げてくれるかに期待したい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2019年11月1日
- 読了日 : 2019年11月1日
- 本棚登録日 : 2019年11月1日
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