風立ちぬ [DVD]

監督 : 宮崎駿 
  • ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
3.62
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本棚登録 : 1870
感想 : 360
3

だーれが風を見たでしょう
僕もあなたも見やしない
けれど木の葉を震わせて
風は通り抜けていく
風よ翼を震わせて
あなたのもとへ届きませ

かつて、日本で戦争があった。
大正から昭和へ、
1920年代の日本は、
不景気と貧乏、病気、
そして大震災と、
まことに生きるのに辛い時代だった。

そして、日本は戦争に突入していった。

当時の若者たちは、
そんな時代をどう生きたのか?

イタリアの
カプローニへの
時空を越えた尊敬と友情、
後に神話と化した
零戦の誕生、
薄幸の少女菜穂子との
出会いと別れ。

この映画は、
実在の人物、
堀越二郎の半生を描くー。

堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて。

生きねば。

白い坂道が 空まで続いていた
ゆらゆらかげろうが あの子を包む
誰も気づかず ただひとり
あの子は 昇っていく
何もおそれない そして舞い上がる

空に 憧れて 空を かけてゆく
あの子の命は ひこうき雲

高いあの窓で あの子は死ぬ前も
空を見ていたの 今はわからない
ほかの人には わからない
あまりにも 若すぎたと
ただ思うだけ けれどしあわせ

空に 憧れて 空を かけてゆく
あの子の命は ひこうき雲

空に 憧れて 空を かけてゆく
あの子の命は ひこうき雲


いいかね、日本の少年よ。
私は飛行機の操縦はしない、いや、できない!
パイロットは他にたくさんいる。
私は飛行機をつくる人間だ!設計家だ!
はい!
いいかね、日本の少年よ。
飛行機は戦争の道具でも
商売の手立てでもないのだ。
飛行機は美しい夢だ!
設計家は夢に形を与えるのだ!
はい!
僕は美しい飛行機をつくりたい。

...二郎少年へカプローニに語らせたこの台詞は、
宮崎駿のアニメ作家としての矜持かと思います。

主人公 堀越二郎の声は庵野秀明が務めます。
忖度や追従という装飾を忘れた庵野の声は、
研究に邁進して生きる堀越二郎の生き様に
ぴったりではないでしょうか。

大地が吠え、地面がのたうち、うねる
関東大震災の描写は恐ろしく、
自然の冷酷さとダイナミズムを感じました。
また自然の前では人間活動のなんと儚いことか、
些事に煩う虚しさを考えさせられます。

まだ風は吹いているか?日本の少年よ!
はい!大風が吹いています。
では生きねばならん!
゛風立ちぬ、いざ生きめやも゛

まだ風は吹いているかね?
はい、吹いています。
では私の引退飛行に招待しよう。
設計で大切なのはセンスだ。
設計は時代を先駆ける。
技術はその後に付いてくるんだ。
私はこの飛行を最後に引退する。
想像的人生の持ち時間は10年だ。
芸術家も設計家も同じだ。
君の10年を、力を尽くして生きなさい。

このシーンでカプローニの地元のひとたちが
カプローニの飛行機に乗って笑い合う様子は、
フェリーニのアマルコルドを思い出しました。

世界は至るところ美に満ち満ちているとは言え
我が町に勝るとは言えず。
あぁ我は如何にとやせん
帰りなんいざ、我が故郷、我が永遠の憩い場へ。
~アマルコルドのワンシーンより~

菜穂子のいる軽井沢へ向かうトロッコ列車は、
アプト式の碓氷峠の鉄道ですね。
めがね橋を渡ってます!
見事な写実描写です。
今は廃線となり線路跡は散策道となっていますが
いやぁ現役時代の動くトロッコ列車に感動です。

...二郎と菜穂子の物語...
母をなくしました。結核でした。
私も同じ病に罹っています。
僕はあなたを愛しています。
帽子を受けとめてくれた時から。
私も!風があなたを運んできてくれた時から!
僕と結婚してください。
はい。でも必ず病気を治します。
それまで待って戴けますか?
もちろん。100年だって待ちます。
...素敵なプロポーズ、素敵な2人ですね。
おめでとう。彼はいい青年。お嬢さんも立派。
いい。この夏、いい夏です。

二郎恋しさに山の療養所を抜け出す健気な菜穂子

二郎さん、二郎さん。
良かった。
見付けられなかったらどうしようかと思った。
もう大丈夫だよ。歩ける?行こう。
私、ひと目会えたらすぐ帰るつもりだったの。
帰らないで。ここで一緒に暮らそう。

私が飛行機をやめて付き添わなければなりません。
それはできません。
君のは愛情じゃなくエゴイズムじゃないのか?
私達には時間がありません。覚悟しています。

僕らは今、1日1日を
とても大切に生きているんだよ。

お姉さま、菜穂子さん山へ帰るって!
私、呼び戻して来ます!
ダメよ!追ってはいけません。
菜穂子さんが汽車に乗るまで
そっとしてあげましょう。
美しいところだけ好きな人に見てもらったのね。
...健気だね。切ないね。

やぁ来たな。日本の少年。
カプローニさん。
ここは私達が最初にお会いした草原ですね。
我々の夢の王国だ。
地獄かと思いました。
ちょっと違うが、同じようなものかな。
君の10年はどうだったかね?
力を尽くしたかね?
はい。終わりはズタズタでしたが。
国を滅ぼしたんだからな。
あれだね?君のゼロは。美しいな。いい仕事だ。
一機も戻って来ませんでした。
君を待っていた人がいる。
菜穂子!
ここで君が来るのをずっと待っていた。
あなた、生きて。......生きて。
うん。うん。
行ってしまったな。美しい風のような人だ。
ありがとう...ありがとう。
君は生きねばならん。
その前に...寄ってかないか?
いいワインがあるんだ...。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ジブリ
感想投稿日 : 2021年4月25日
読了日 : 2021年4月25日
本棚登録日 : 2021年4月25日

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