カルト資本主義 (文春文庫 さ 31-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2000年6月1日発売)
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感想 : 12
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昔読んだ。多分この本の単行本がでた98年頃ではないかともう。非常に面白いと思い、こういうわけの分からん反理性主義的なカルトは嫌だなあ、と思った。
あれから十数年。再度読み返す。内容そのものはよく覚えていたので特に違和感はないが、読むこちら側の変化が身に沁みる。

中身が古びたわけではないのだけど、十数年の社会の変化の大きさの方にいささか驚いている。日本社会や会社というものを、変えようもないビッグブラザーのように認識し、それに従う「サラリーマン」という人間モデルも、今となってはなんだか虚構臭い。
かつて、あまりにも実体を伴って存在していたものが、いまやこのように、お殿様とか将校とかと同じようなレベルの存在になったということに、あらためて驚いた。
でも、会社というのは外から見るほど実体のあるものではないというのは、経営すると案外分かる。国家や金と同じく、共同幻想である。共同幻想から覚めかかった人間が、それを最強化しようとするとプロトタイプに戻る・・・だから古神道とか、ひとりの人間レベルの素朴な生活信条(前向きに生きよう・・・とか)にしか戻れない。
ここにあるのは、貧弱な理性である。
カルト資本主義は、たしかにあるだろう。しかしそれはそんなに大した敵ではなくて、単なる理性と良心の貧弱な人々である。操る側も、操られる側も。

斎藤氏は、そこに踏み込まない。だから、読んでいて物足りないと思った。
生産性向上のための内面支配という物語で解読しようとする。それは物事の一面に過ぎないし、切れ味はいいが粗雑だ。
これでは、まさに「アメーバ」のごとく、切ったつもりが、ふたたび修復し合体してもとに戻るだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年11月19日
読了日 : 2011年11月19日
本棚登録日 : 2011年11月19日

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