基本的に、旧劇場版と新劇場版「全て」を観ていないと、何のことやらわからない書評だと思います。
「シン・エヴァンゲリオン」を観た後、噂を聞いて初めて貞本版エヴァ全14巻を紐解いた。(慎重に読めば、だが)恐ろしいくらいに映画と違う。原作も庵野監督ではなく、GAINAXになっている。これはGAINAX流のエヴァンゲリオンなのだろう。(後にGAINAXはカラーと名前を変える。10-13巻は両方明記、最終巻はカラー単独になる)
エヴァの暴走で内面世界に入り込んだシンジが、碇ユイの魂に出会う(8巻)。
ゲンドウ「セカンドインパクトの後に生きていくのか、この子は‥‥」木の下で若いゲンドウとお母さん碇ユイの魂がシンジに乳をやっている。
お母さん「いいえ。生きていこうとおもえば、どこだって天国になるわ。だって生きているんですもの。幸せになるチャンスはどこにでもあるわ」
ゲンドウ「そうだな」
まるで「シン・エヴァンゲリオン」を先取りしたかのような碇ユイの台詞である(2002年12月刊行なので、むしろ旧劇場版の核の部分だったとも言えるかもしれない)。
そして、衝撃的な最終巻(14巻)のストーリー。発行は2014年11月だ。つまり、もはや「シン・エヴァンゲリオン」の脚本が半分以上出来上っていてもおかしくはない。
何処が衝撃かというと、ストーリー的には(台詞はかなり変わっているが)旧劇場版と同じように進んだ話が、最終話ではシンジはもはや赤い海の浜辺に降りたりはしない。もう1人のアスカから「気持ち悪い」などと罵倒されたりはしない。
表紙からわかるように、最終話、粉雪が舞う駅のホームで、碇シンジは東京の明城学園に入学受験をするために、中学生のともだちと別れを告げている(山口宇部駅だろうか)。もはやサードインパクトの記憶は世の中にはない。ところが、エヴァシリーズの遺骸が古代の遺跡となって建っているのが現代世界と唯一違うところなのである。明城学園駅前でシンジはアスカに出会い、アスカに色目を使うケンスケにも会っているのである。
これがもしかしたら、「シン・エヴァンゲリオン」の幻のラスト初稿だったのかもしれない。
更にボーナス短編として「夏色のエデン」がつけ加わっている。そこには、碇ユイの後輩にして、ユイの次ぐらいに優秀な女子学生にして、ユイに恋している細面の女の子が登場する。16歳の女の子は英国に留学するという。その娘の名前が最後に明かされる。だとすれば、その娘はセカンドインパクトの前に生まれている。永遠の14歳シンジ、綾波レイ、アスカとは決定的に違うのだ。あゝそういうことなのか(いや、それにしても、まだ謎は多く残るが)。いつから構想されていたのか?とても面白かった。
- 感想投稿日 : 2021年3月31日
- 読了日 : 2021年3月31日
- 本棚登録日 : 2021年3月31日
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