橋のない川(七) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1994年7月28日発売)
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本棚登録 : 216
感想 : 21
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大正から昭和になったところで、残念ながら終わり。仕方のないことだけど、孝二や熊ちゃんのその後はわからないまま。無事網走に行けて、金時のお父ちゃんに会えたのだろうか。
第六部、第七部は新聞記事の引用などに対し登場人物たちが話し合う記録的な描写が多かった。第五部までの方が、生活の様子が生き生きと描かれていた気がする。後半では団結することの大切さと、恐ろしさと、両面が語られているなと思った。
それにしても、百年で社会は激変したなぁ。いい変化も悪い変化もあると思うけど、食べ物がないと人間は生きていけないというのは変わらない。当たり前に三食食べていられることに感謝しなくては…。
「世の中わけのわからないことばかりなのに、それに対して納得の行く答えを出してくれる人はどこにもいない」、登場人物たちのこの声は、今まで自分もずっと持っていた思いなのですごく共感した。だからこそ自分で考える力をつけなくてはならないのだ、と強く感じる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2017年6月16日
読了日 : 2017年6月16日
本棚登録日 : 2017年6月14日

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コメント 2件

アテナイエさんのコメント
2017/06/17

マヤさん、長編の読了、素晴らしいです!!
確かに5巻以降はルポ風になってきていますが、全体を通して大変読みやすい、しかも正確で優しく美しい日本語が使われていていたく感激しました(^^♪)
また、一貫して作者が伝えたかったことは普遍性をもっていますし、読んだ一人ひとりに考える機会が与えられることが最大の魅力ですよね♪ そういえば私もあらためて毎食作りながら「当たり前に三食食べていられることに感謝する」ようになりました!(笑)それとともに、今の私たちの自由や平等や人権といわれるものが、決して当たり前ではないのだな……宮沢賢治ではないですが、これからも「すきとおったほんとうの食べ物」にしていかなくては……決して残飯状態にしたくない……つい先日の国会に呆然としながらそんなことを思いました。いまの時代だからこそ「1984年」とともに(笑)多くの人に読んでもらいたい作品ですね♪

マヤ@文学淑女さんのコメント
2017/06/17

アテナイエさん、ありがとうございます!これで今年の目標がひとつ達成できました。
六、七部では大会やデモの様子なんかも描かれていて、石牟礼さんの「苦海浄土」を思い出しました。どちらも勇気を出して声を上げることの重要性を伝えてくれる作品ですね。
苦境にめげず大統領にまでなったリンカーンについて孝二たちが感心する場面がありましたが、アメリカにも黒人白人間の根深い人種差別があるんだよ…と孝二たちに教えてあげたい。
今の時代だからこそ読むべき古典ってたくさんある気がします。「1984年」は今ブームのようになっていますが、この「橋のない川」はレビューも登録数も少なくてさみしいですね。目を瞑ればなくなるものではないのだから、歴史として知っておかなくてはならないことだと思います。

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