夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

著者 :
  • 双葉社 (2004年10月12日発売)
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本棚登録 : 3763
感想 : 609
5

私の中で、何度も戦争はいけないことだと思っていたが、ここまでそれを強く思わせてくれた作品はありませんでした。また、私の思いが、実は遠い過去の出来事であることから、逃げていたことも実感いたしました。

「夕凪の街」を読んで、想像を絶する恐ろしさを感じ、一瞬でも読まなきゃよかったと思った自分に不快感を抱きながらも、「桜の国」を読んだ後は、少し落ち着いて、あれこれ思いを巡らせる自分がいました。

原爆投下については、自然現象ではなく、あくまで人間が引き起こしたものであることを再実感したときの絶望感は、なんとも筆舌に尽くしがたい、哀しくてやり切れないものがあり、生き残った人たちも、それの影響を間接的に受けて生きていかなければいけない思いは、如何ばかりだったのだろうか。それを、この作品では、登場人物たちの一見、明るい雰囲気を見せながらの、内面での葛藤や思いを吐露する形で、教えてくれます。

ただ、その後の世代における辛い中でも、ささやかな和みや幸せを感じさせたエピソード(特に、七波の両親の結婚へのやりとりは涙ものでした)や、ヒロシマとの向き合い方には、家族という、思いを受け継いでゆくものの生きる姿を、まざまざと見せられた思いでした。

以下、印象に残ったというか、心に刻もうと思ったフレーズを掲載しますが、ネタバレを気にされる方はご注意下さい。









誰もあの事を言わない
いまだにわけがわからないのだ
わかっているのは
「死ねばいい」と誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ

嬉しい?
十年たったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
「やった! またひとり殺せた」
とちゃんと思うてくれとる?

あんた被爆者と結婚する気ね?
何のために疎開さして養子に出したんね?
なんでうちは死ねんのかね
うちはもう知った人が原爆で死ぬんは見とうないよ

母からいつか
聞いたのかも
知れない
けれど こんな風景を
わたしは知っていた
生まれる前 
そうあの時 わたしは
ふたりを見ていた
そして確かに
このふたりを選んで
生まれてこようと
決めたのだ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2021年10月10日
読了日 : 2021年10月10日
本棚登録日 : 2021年4月4日

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