ガラス細工の一冊。
静謐な小川さんの紡ぐ言葉と世界に連れ出された途端、誰にも邪魔されたくない時間が流れ出す。
自死した彼の記憶の世界に静かに入り込もうとする私。
そして記憶の中だけで生きている彼の母。
その対比が印象的。
誰もが今にも壊れそうなガラス細工の中にいて、拾い集めた記憶をさらに自分のガラス細工に閉じ込める、そんなシーンが心に浮かぶ。
彼の記憶を大切に取り込み涙を添えて静かに封印する、それは二人だけの記憶と香りをようやく創り上げたかのような瞬間。
いつでも哀しみを閉じ込め愛に浸ることができる永遠のガラス細工。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年9月8日
- 読了日 : 2021年9月8日
- 本棚登録日 : 2021年9月8日
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