増補版 誤植読本 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2013年6月10日発売)
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本棚登録 : 331
感想 : 35
4

誤植が何故発生するのか、発生したらどうするのか、発生した人はどう感じるのかがいくつもの立場で語られる。
もちろん、誤植は無いほうが書き手の意図を正しく伝え、残すために必要だけれども、個人的には誤植は好きだ。人の手を通っている感覚がする。いくつもの障害(校正)をのりこえ、存在する力強さがそこに存在する。息を潜め、隠れていたその誤植はある日、何人もの有識者によってその存在を日の元にさらされる通快感たるや想像を超える。もちろん、これによって迷惑や不利益を受ける人たちもいるのだけれど、誤植があると見つけた自分とその生き残った誤植に万歳をあげたいくらいだ。
世紀の誤植はたくさんあるけれど、ジョジョの奇妙な冒険の「何をするだぁ~」は誤植の中の誤植であり、とうとう擦りなおされたけれど、作者も認める「あれはあれでよかったんじゃないの」の典型例だ。
誤植を否定するなかれ、誤植を認め、人が万能ではないことを改めて確かめることは、つまり人間らしさの発露でもあると思うのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論
感想投稿日 : 2013年7月7日
読了日 : 2013年7月7日
本棚登録日 : 2013年6月30日

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コメント 2件

だいさんのコメント
2013/07/14

私も誤植は面白いと思います。

>人の手を通っている感覚がする。

受け手にも予想外の感覚が宿る。とも思います。

libraさんのコメント
2013/07/16

そうですね、作家が予期しない誤植で、予想外の解釈が生まれることもありますね。そんなこともこちらの本に記載されていますよ(笑)夏目漱石全集とか馬鹿馬鹿しくて抱腹絶倒でしたw

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