文字だけの筈なのに、河内弁のリズムや熱量が再現されているかのような途轍もないエネルギーを感じる。
主人公熊太郎の本人曰く思弁的過ぎる傾向は、彼を追い詰め、堕落させ、破滅させる。
その最中にありながらも思考を止めぬ熊太郎は、時に哲学的にもなるのだが、見栄っ張りで俗っぽい側面が顔を出しては笑いを誘う。
ドストエフスキーの地下室の手記を彷彿とさせる熊太郎の独白は、いつだって見当違いで愚かで滑稽で、少し悲しい気持ちにさせる。
個人的には弥五郎の存在が切なくてならなかった。
熊太郎のようなある種の怪物ではないが、忠実で真っ直ぐで卑怯な真似のできない彼にとって、熊太郎との出会いは不幸な出会いだっただろう。
ただ弥五郎は決してそうは思わないから、なおさら切ない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
20:日本の文芸作品
- 感想投稿日 : 2015年2月10日
- 読了日 : 2015年2月10日
- 本棚登録日 : 2014年11月3日
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