集団的自衛権を容認した2014年7月の閣議決定は、日本を戦争のできる国にする大転換と評価されたが、著者は、さまざまな「縛り」によって実際に行使は不可能な内容になっていると指摘し、公明党が一定の歯止めの役割を果たし得たと評価している。
本書で読む価値があるのは、この第一章まで。あとは公明党=創価学会を擁護するだけの内容である。それも、公明党の政治的戦略を客観的に分析したうえで導かれた結論なら説得力もあるだろうが、根拠にしているのは学会自身がうたっている教義と、戦争中に軍部の弾圧と闘ったという歴史だけ。これでは日本共産党のプロパガンダと変わりません。
だいたいさ、社会党や共産党を「反米ナショナリズムをあおる」と批判しておきながら、創価学会がナショナリズムに陥らないと主張する根拠はというと、池田大作個人とむすびついた宗教には国境がないから、とは恐れ入る。それを言ったら共産党だって、理論としては国境をもたないはずだったのに、まんまとナショナリズムにはまった歴史があるわけでしょ。まして個人崇拝にもとづく宗教が、どうして排他的性格を免れると言えるのか。
実際に戦後政治のなかで公明党=創価学会が果たしてきた政治的役割の分析もないし、池田大作への批判封じや共産党への盗聴事件など、学会に都合のわるい歴史はすべて無視したうえで、日本の政党政治で空白となっている中道左派の部分を公明党が埋められる、とまで言う。とても中立客観的な立場から書かれた本とは言えません。
むしろ興味深いのは、佐藤優は公明党が実際に日本政治で果たしている、かなり黒に近いグレーの部分だって知っているはずであるにもかかわらず、あえてキレイな宗教的教義の面から、公明党=創価学会の擁護論を押し出してみせたということ。この出版に政治的意図がないわけがない。プロテスタントが評価しているから客観的、という装いにだまされず、冷静に彼の狙いを考えるべきでしょうね。
- 感想投稿日 : 2015年3月3日
- 読了日 : 2015年2月22日
- 本棚登録日 : 2015年3月3日
みんなの感想をみる