アイゼンハワーからレーガンまで、歴代大統領に仕えた黒人執事を通して、アメリカの表の政治における黒人の位置を描き出そうとした意欲作。
黒人が公民権どころか生存さえおびやかされていた時代、著名な役者たち演じる大統領らが活躍する華やかな「表の政治」においては、自分の意見をもたず、「空気の一部」のように不可視の存在となることによってかろうじて生き延びてきた父親は、現状にいらだち過激化する息子がとびこんでいく、もうひとつの政治の場においても、主体となることができないのである。その彼がついに職をなげうつ決心をするのが、ホワイトハウスにおける長年の差別待遇も是正され、レーガン夫妻によって「名誉黒人」として晩さん会に招待された後だったというのは、とても興味深い。レーガンはその一方で、南アフリカのアパルトヘイト体制を支持し続けていた。
自らは黒子に徹しながら、黒人社会を引き裂く政治の表と裏に関わり続ける主人公は非常に面白いのだけど、時間の制限もあってか、歴代政権の政策の変化が表面的にしかなぞられてないのが残念だし、特にベトナム戦争をめぐる黒人社会の亀裂、公民権獲得後の分裂について、突っ込んだ描写がないのは残念。しかも最後に、オバマ大統領の誕生によって、黒人社会の政治的闘争がいちおうのハッピーエンドを見たかのような結末には、ほんとにそれでいいと思ってるのか?と聞きたくなってしまう。政治って、それこそ表舞台だけの話ではないはずなのに。
ところでオプラっていい役者なんですねえ。知らなかったわ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
外国映画
- 感想投稿日 : 2014年9月12日
- 読了日 : 2014年9月7日
- 本棚登録日 : 2014年9月12日
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