前に同じ角田光代さんの料理エッセイ「今日もごちそうさまでした」を読んだ時に、これも面白いと薦めていただいた小説。
まずぱらぱら捲ってみてびっくり。本編は4分の3くらいで、残りの4分の1は小説に出てくる料理のレシピ集(しかも写真つき!)になっているつくり。
そして最後に角田さんのエッセイ的あとがきで締められていて、一粒で三度美味しい、初めて見るつくりの本でした。
生きている限り、食べる、という行為は絶対に切り離せない。
精神的、身体的な理由で食欲がわかない日もあるけれど、食べないでは生きていかれない。食に対するこだわりの有無は人それぞれあれど。
たまには奮発して美味しいものを食べに出掛けよう、という日もあれば、面倒だから出来合いのもので済ませよう、という日もある。
だけど毎日何かしらは口にしていて、それは人間の日常だ。
この小説は、普通の人々の日常の中にある様々な料理を描いているのだけど、なぜかとてもスペシャル感がある。
失恋したから食べるごはん、亡き妻の味を思い出しながら作るごはん、カップルのごはん、受験生のごはん、長年連れ添う夫婦のごはん…
一編はごく短くさらっと読めるけれど、ゆるやかな愛情に満ちている。
そして一話目の脇役が二話目の主役になり、二話目の脇役が三話目の主役になり、という形の連作になっている。最終話の仕掛けも良かった。
温かく、そして少し切ない気分に。
角田さんのあとがきを読んでいて、今は当たり前に食べている母親の料理もいつかは食べられなくなる日が来るのだ、と改めて実感。
たまにしか食べられなかった時は有り難みがすごくあったのに、それが日常に溶けてしまうのはとても恐ろしい。
それは夫婦なんかでもきっと同じで、作ってもらえることは当たり前ではないということを、頭の片隅にでもいいから置いておければ感謝の度合いは違ってくるのだと思う。
作ってみたいレシピもいくつかあった。
何より読んでいてお腹が空いた。笑
食べ物を美味しく食べられるって素晴らしい。そんなことをしみじみ思った。
- 感想投稿日 : 2015年7月6日
- 読了日 : 2015年7月6日
- 本棚登録日 : 2015年7月6日
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