スピーチライターという、日本ではまだあまり知られていない職業を中心に描かれているお仕事小説でありつつ、主人公の二ノ宮こと葉の恋愛も絡めた恋愛小説の要素もありつつ。
ストーリーの流れは言ってしまえばとてもベタなのだけど、時々挟み込まれる素晴らしいスピーチの数々(披露宴でのスピーチ、弔辞、政治家のスピーチetc)に何度も胸が熱くなったり、スピーチライターというあまり馴染みのない仕事が興味深く読めたので、その面白さだけでベタなストーリー展開はあまり気にならない。
というか、こういう小説はむしろ、ベタな方がいいのかもしれない。
挫折のような出来事のあと、出逢いとともに気づきがあって、めちゃくちゃに揉まれながらも最終的には爽やかな気持ちになれるところに行き着く。
ストレスのない、爽快感抜群の読み心地だった。
言葉で人の心を惹きつける。それは難しいことのように見えて、きちんとセオリーがある。
私自身はスピーチする場面に出くわすことは無いに等しいけれど、もしもこれからそういうことがあった時には、きっとこの小説を思い出して開くだろうと思う。
ざわついている聴衆が静まる瞬間を掴むこと、余計なことは言わずシンプルな構成の言葉で伝えること。原稿は見ないこと。
確かに、披露宴なんかで「この人のスピーチ良かったな」って感じる時って、そのセオリーが守られてたかも、と読んでから思った。
そしてそういう良いスピーチが出来てる人は案外少ないということも。
それはもしかしたら、セオリーとともに人間性が表に出る瞬間だから、なのかもしれない。
政治の要素も多分に含まれているのだけど、政治家も言葉に力がある人にはなぜか惹かれてしまうっていうこと、あるよね。言ってる中身をよくよく考えてみたら大したこと言ってなかったりするのに。笑
素晴らしいスピーチの陰にはスピーチライターあり、なのかも?と、これから気にして色んなことを見てしまいそう。
- 感想投稿日 : 2015年12月25日
- 読了日 : 2015年12月25日
- 本棚登録日 : 2015年12月25日
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