トンガったSFを刊行し続ける国書刊行会「未来の文学」シリーズの最新刊は、かつてサンリオSF文庫等で出ていたディレイニーの伝説的中短編を1冊にまとめたもの。解説も含めて全580ページ・上下二段組みの美しくかつ迫力ある装丁です。
収められた作品は、純然たるSFからファンタジーまでと幅広く、比較的ダークで閉塞感に満ちたテーマが多いです。とはいえ、そんな暗めなストーリーであっても煌びやかな言葉とイメージの奔流で描き出す、ディレイニーの特徴がよく出た作品集。
鴨ごときの貧弱な理解力では、正直なところ何が描かれているのか、何が示されているのかわからないところも多々あります。が、そうした「わからなさ」加減も含めて、言葉の魔術師・ディレイニーが繰り出す眼も綾な世界に飲み込まれて気持ちよく酩酊するのが、この作品の楽しみ方。手練の翻訳家陣による美しい日本語訳があってこそですね。
明確な結末が提示されない話も多く、すっきりわかりやすいSFを求める人には不向きといえますが、そもそもそうしたSFを読みたい人はディレイニーには手を出さんでしょうなぁ(笑)
最後に収録された中編「エンパイア・スター」は、それまでの短編の醸し出す暗さを一気に吹き飛ばす壮大かつ爽やかな少年の成長譚。前半の短編を読んで今ひとつ波長が合わないと感じた方も、ぜひこの「エンパイア・スター」だけは読んでみてください。イメージが変わります。この作品に込められた寓意は、他の作品からも頭一つ抜きん出て難解です。が、それでもひとつの冒険SFとして十分楽しめます。そんなところも、ディレイニーの魅力の一つですね。
- 感想投稿日 : 2015年1月17日
- 読了日 : 2015年1月3日
- 本棚登録日 : 2014年12月30日
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