60年代日本SFベスト集成 (ちくま文庫 つ 19-1)

著者 :
制作 : 筒井康隆 
  • 筑摩書房 (2013年3月1日発売)
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本棚登録 : 176
感想 : 21
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自らもSF作家である筒井康隆氏が、日本SFの黎明期たる60年代の選りすぐりの作品を編纂した短編集。収録作はこちら。

「解放の時代」星新一
「もの」広瀬正
「H氏のSF」半村良
「わがパキーネ」眉村卓
「金魚」手塚治虫
「色眼鏡の狂詩曲」筒井康隆
「渡り廊下」豊田有恒
「ハイウェイ惑星」石原藤夫
「X電車で行こう」山野浩一
「そこに指が」手塚治虫
「終わりなき負債」小松左京
「レオノーラ」平井和正
「機関車、草原に」河野典生
「幹線水路2061年」光瀬龍
「大いなる正午」荒巻義雄

ハヤカワ文庫が出している「日本SF短編50」と2編被ってますが、編纂されたのはこちらの方が先。この本は70年代に刊行されたシリーズの復刻版で、当時は70年代のアンソロジーも1年ずつ区切って編纂されていたようです。筒井康隆、こういう仕事もしてたんですね。資料的価値も高いと思います。

さて、「日本SF短編50」と一部被ってはいますが、前衛的な作風で名高い筒井康隆がアンソロジストを務めただけあって、ハヤカワ版に比べると「トンがった」作品が多いです。漫画も含めている点がユニーク。SFという概念は小説や漫画といったフォーマットに左右されるものではない、ということを静かにアピールしているようにも感じ取れます。
そのせいか、鴨の主観的な印象では、一読「今読むとキツいなぁ」と感じる古臭さはありませんでした。むしろ、一周してきて新鮮な感じヽ( ´ー`)ノ「古いSF」を十把一絡げに論評する際にありがちな、「科学の進歩が前向きに捉えられていてバラ色の未来を描いた云々」といった雰囲気は、全くありません。閉塞感、喪失感に満ちた作品が多いです。シブいですよ。まぁ、中には落語の前座噺みたいな作品もありますがヽ( ´ー`)ノそんな高低差も含めて、若きSF者こそ読むべき。

やはり圧巻なのは光瀬龍。60年代に書かれたとは思えない普遍性を感じる圧倒的なスケール、壮絶とも言える虚無感。ストーリー的に完結した作品ではないのですが、屁理屈こねずに世界観に酔え!というタイプの作品。読む人を選ぶかもしれませんが、鴨は大好きです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF(日本・短編)
感想投稿日 : 2013年12月8日
読了日 : 2013年11月21日
本棚登録日 : 2013年3月7日

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