「沈黙」に続く遠藤周作のキリスト教&長崎テーマの読書。
作品自体は「沈黙」のほうが素晴らしい出来のように感じたけれど、キクという女の一生を通して、信仰や愛について描かれているだけに、より感じるものは多かった。
キクの激しくも哀しい一生にはもちろん胸を打たれたんだけれど、伊藤とプチジャンの海辺での対話が圧巻。(むしろエピローグの津和野での懺悔が蛇足に感じた。勝手な感想だけど。)
神は本藤よりも伊藤を愛すると。本藤のような人に神は必要ないのだというような。
そうなのか…。本藤はすごく頑張ってるからこその成功なのにな、神様がその頑張りを見守ってくれて、幸運を与えてくれないと、割にあわなくない?なんて最初は思ったけれど、筆者の描く神はそうではないのね。救済を与えるのではなく、傍にあって苦しみをともにしてくださる。それならダメ人間ほど神に愛されるってこと?それって不公平じゃない?いやいやでも、人間は完璧じゃないんだから、本藤のような人だって弱くずるく醜い部分があるわけで、そこにおいては神がともにあって…。っていうかそもそも不公平って発想自体がおかしいような。でも…。
「沈黙」に続いて、考えれば考えるほど、神という存在の意味が、大きく変わってくる読書。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
近現代日本文学
- 感想投稿日 : 2012年8月10日
- 読了日 : 2012年8月10日
- 本棚登録日 : 2012年8月10日
みんなの感想をみる