とにかく読むのに時間がかかった。
でもゆっくりじっくりと時間をかけて読みたかったから良い。
鎌倉で読み始めたことも思い出。
想像を上回るガッツリ耽美。
いきなり解説の話になるが、著者は静止画の中に物語を見出すといったことが書かれてあったけど、まったくもってその通りだと思った。
美しくも、愛憎に獲り憑かれ憔悴しきっている大人の男と、エロスの寵愛を一身に受けたかのような可憐な美少年。
少し距離を保って、書斎に佇んだりなんかしていて
(ひとりは机に肘をつき座っていて、美少年は書架にもたれかかって少し首をかかげてこちらを向いている)
そんな静止画の記憶の創造みたいな世界なのだった。
(ま、まさに妄想。。。)
すべて美しく浮世絵離れしているかのようだけど、描かれる心理描写がグロテスクの域に達して、ある意味とても下品だったりするからそのバランスがくせになる。
とくに、「日曜日には僕は行かない」というよだれもののタイトルがつけられた短編に出てくる達吉(この名前の安定感)が、八束夫人を見送る際に一瞬見せたゆがんだ笑顔…。
性格ゲロ悪。と思わずつぶやいてしまう。
そんな悪趣味もすべてクセになる。
枯葉の寝床のSMプレイで若干、本当に気持ちが悪くなる。あまりにも緻密で粘着質な描写力。すごすぎ。ほんとに文章の魔力。
そういった意味で、もしかしたら最初の短編「ボッチチェリの扉」が一番好みだったかもしれない。
人生の一時期をあんなにBLに注いだことがあるくせにかたじけない。
とにもかくにも憎めない人だと思った。
美しいものを追い求める、それはもはや勇姿。
貧乏サラヴァンを静かにポチるのである。
- 感想投稿日 : 2015年2月22日
- 読了日 : 2015年2月21日
- 本棚登録日 : 2015年2月21日
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