V字回復の経営―2年で会社を変えられますか

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  • 日本経済新聞出版 (2006年4月1日発売)
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5

三枝3部作第3弾!
これは熱くなる!
今度は2年でV字回復を実現するストーリ!
3部作の中では、一番耳が痛くなると同時に、一番熱くなりました。

三枝さんがコンサルした5社をエピソードをMIXした実話となっていますが、あとがきを読むと内容の90%が1社の実話で、その会社は産業機器メーカのK社、その子会社KS社となっています。
産業機器メーカのK社といえばコマツでしょ!
っていうことで、ぐぐってみると、その通りコマツとその子会社コマツ産機の物語でした。
実際にコマツの鈴木さんが2009年に新経営研究会で後援しています
http://www.shinkeiken.com/wp/tag/コマツ

この鈴木さんが本書の改革のヒーローとなった川端さんのようです。

コマツの経営改革といえば、ダントツ商品開発などが有名で、以前にケーススタディとして読んだことがありますが、ここまでの壮絶さがあったことは知りませんでした。
やはり、実際にその改革に深く入り込んだ人の話は凄い。

さて、ストーリとしては、不振事業の再建を2年の期限付きで担うことになった事業部長黒岩とそのスタッフたちの熱い物語です。

本書の前半では、この黒岩とタスクフォースによる不振事業の症状、現象の見えるかです。本書では、50もの症状を挙げて解説しています。
これが、耳が痛い。グーの音も出ないぐらいにその通りて感じ。

そして、今までの作品同様に、さまざまな立場の人たちの独白(インタビュー)という形で、改革に対しての気持ちや行動が、改革前、改革中、改革後で語られています。
そこで語られているネガティブな要素がこれまたその通りだよなって思ってしまいます。

後半は改革を成功に導くための要諦50として改革のコンセプト、ストーリ、巻き込み、実行とそれぞれにまとめられています。
さらに、改革に伴う苦悩、苦労がひしひしと伝わって来ます。

改革全体のフレームワークとしては8つのステップにまとめられています。
筆者いわく、「経営行動・8つのステップ」で改革だけでなく経営行動そのものにつながるステップです。
(1)成り行きのシナリオを描く
(2)切迫感を抱く
(3)原因を分析する
(4)改革のシナリオを作る
(5)戦略の意思決定をする
(6)現場へ落とし込む
(7)改革を実行する
(8)成果を認知する

また、エピローグには、改革の成功要因とステップとして
(1)改革コンセプトへのこだわり
(2)存在価値のない事業を捨てる覚悟
(3)戦略的思考と経営手法の創意工夫
(4)実行者による計画つくり
(5)実行フォローへの緻密な落とし込み
(6)経営トップの後押し
(7)時間軸の明示
(8)オープンでわかりやすい説明
(9)気骨の人事
(10)しっかり叱る
(11)ハンズオンによる実行
としてまとめられています。

本書の中で、気になったエピソードをいくつか。
改革プランの発表に遅れて入ってきてネガティブなコメントを発した管理職に対して、大声で叱責した黒岩。
その後、黒岩が感じた「むなしさ」
事業を救ったら誰が一番得をするのか?事業を救うことでその管理職も受益者の一人のはずなのに...
といった台詞が刺さります。

もうひとつは、開発中の新商品の顧客メリットを説明できない開発の課長。
また、売り出す新商品の顧客に対するメリットを説明できないマーケティング担当者。
顧客の業務内容をよく理解できないとそのメリットについては答えられません。
結局、顧客のことをよくわかっていなかったといったくだり。
自社の論理ばかりで市場に商品を繰り出してきたやり方がそういった結果を招いています。
うー、耳が痛い。

などなど、ほかにも、ぐさぐさ刺さるエピソードや症状がいっぱいです。

本書は、筆者自身が「自分のビジネス人生の総決算のつもりで書いた」とあるとおり、とても読み応えのある、かつ、熱くなるストーリ展開となっています。
今までの2作とはちょっとレベルが違う感じ。

これも、間違いなく必読

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2017年4月2日
読了日 : 2017年4月2日
本棚登録日 : 2017年4月2日

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