はじめての構造主義 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (1988年5月18日発売)
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感想 : 267
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レヴィ・ストロースの人類学を見ていけば、最近読んだ本たちによくでてきた、黒人奴隷の問題の出口がわかってくるのかもしれないという予感の元、読み進めていきました。まあ、構造主義自体もう何十年も前にできたものなので、そのころからすでに開かれた出口ではありますが、今でも解決されていない問題ですし、かといってそれ以降よい方向へ向かわせてもきただろうから興味がありました。構造主義の「構造」とはなんぞや、といえば、人間でも物事でも社会でも、その根っこの部分の仕組み、みたいなもの、と言えるでしょう。因数分解していって残ったところで眼前にあらわれる法則、と言い換えてもいいです。そして、付け加えるならば、それははっきりと言葉にできないし、はっきり見えません。それが「構造」なんだと理解しています。たとえば、言葉にするとき、文章にするときに、その元となる動機があると思うんです。それは言葉になる前なので、ふわふわどろどろ形もなくてまだ名付けられてもいない。そういうところを動機とし、スタートとして、言葉が生まれる。もうちょっと厳しく言うと、言葉に当てはめる。要は言葉という枠にはめることなので、言葉になる前のふわふわどろどろしたものと、言語化したものは等価ではないです。まあ今回はそこのところはいいとして、そのふわふわどろどろしたものを見つめてみる行為と、「構造」を見つめてみる行為はちょっと似ているんじゃないでしょうか。そんな見方をして知覚するのが「構造」なんじゃないでしょうか。「構造」というものについては、まあ、そのくらいにしておきます。レヴィ=ストロースの人類学で見えてきたのは、欧州中心主義の否定です。それは、奴隷にされたアフリカの黒人や、アメリカ先住民、オーストラリア先住民など、いわゆる未開の民族への差別を許さないものでした。欧州人が優れている前提で彼らを頂点とするヒエラルキーを作り、下位に位置する民族からはいくらでも搾取をしていい、という植民地主義の間違いを指摘するものだった。著者は、「西欧近代の腹のなかから生まれながら、西欧近代を食い破る、相対化の思想である」と本書のはじめのほうで構造主義を表現していました。そのくらい、衝撃的な思想なんですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 説明文
感想投稿日 : 2020年2月2日
読了日 : 2020年2月2日
本棚登録日 : 2020年2月2日

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