無関係な死・時の崖 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1974年5月28日発売)
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本棚登録 : 1658
感想 : 110
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代表作『砂の女』を書いていた時期に並行して書かれたいくつかの短篇作品を収録したものです。『砂の女』を思わせる、黴臭いくらいの和のテイストを感じる作品もありますし、初期の作品から続くテイストであろう想像力がぶっとんでいるおもしろい作品もあります。『なわ』なんていう残酷なものもあり、読み手をひとつところに停滞させず、そればかりか揺さぶってくる短篇集になっていると思いました。

とくに「人魚伝」という作品に夢中になれました。沈没船の探索中にであった緑色した人魚に恋する話ですが、一筋縄では終わらない。この作品もそうなのですけれども、既視感を覚えることなく、「いままさに知らない物語のなかにいる!」ということのわくわく感がとてもよいです。自分の知らないものや、自分にとって新しいものに触れている喜びがあります。そして、ぶっとんでいながらも、読むのに耐えうる弾性を備えている作品群でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年5月16日
読了日 : 2021年5月16日
本棚登録日 : 2021年5月16日

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