女性の一生を雪のひとひらにたとえたファンタジー。「川の流れのように」なんて歌がありますけれども、雪のひとひらの人生は、水の流れに流されていくなかでの人生です。そのなかでも、喜びがあり、悲しみがあり、美しさにうっとりするときがあり、そして苦難がある。わたしはいったい、なんのために地上に降りてきたのだろう、と雪のひとひらは考え、そして、その最後に答えを見つけだします。その答えは奉仕する役割をまっとうするためにこの世界に降りてきた、というようなものなのですが、実際、人間の人生であってもそのように考えてみると、「なぜ自分ばかりがこのような大変な目に遭うのだ」という嘆きや憤りが昇華されると思います。「そうか、自分は世界に奉仕するために生まれたわけで、その役割を果たしている」とわかることで救われるものがあります。こういうのはキリスト教の価値観からくるのでしょうか。前に読んだ、同じ著者の『スノーグース』という短篇集でも、そのことを強く感じましたし。この不条理な世界で生きていくための賢い感覚だよなあと思いました。宗教のすごいところってこういうところにあるんですよねえ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2018年4月26日
- 読了日 : 2018年4月26日
- 本棚登録日 : 2018年4月26日
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