ヤクザと日本: 近代の無頼 (ちくま新書 702)

著者 :
  • 筑摩書房 (2008年1月1日発売)
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歴史を辿ると、ヤクザにつきものの賭博は奈良時代に賭博禁止令が発令されていることからも、古くから行われ、鎌倉幕府の事績を記した吾妻鏡には、博徒たちの徒党化についての記事が見られるそうで。
更に遡ると、任侠集団については、中国古代前漢の歴史書、司馬遷の史記にもその存在が見られる。
江戸の頃、傾き者(カブキモノ)もその類と言える。
そのルーツから近代ヤクザと呼ばれる彼らをまとめた一冊。
ヤクザには博徒とテキヤがいる。更に博徒には渡世人と稼業人の2種類がいる。他に正業を持たない博奕打ちが渡世人、土建、運輸、鉱業などに関連した稼業を営み、基本的にそれで食っているのが稼業人と分類される。
近代以前のヤクザというのは、それによってしか生きられない者たちが生きんがためにより集まった生活集団であり、任侠道イデオロギー集団ではない、というのが著者の見解だ。
戦前から戦後にかけて、貧民や流民といった下層階級の人々が生きるため、また混沌とした生活環境の中、法治国家としての機能が不全の際に、国や政府の代わりに自警団として、自治を行なっていた。

コロナ禍の令和。指定暴力団の構成員数は最盛期から、相当数減少している。
かつて、近現代前のヤクザというのは、セーフティーネットとして社会生活の営みという目で見れば、市井の民の実生活には必要なものだったんだなと思いますね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年7月29日
読了日 : 2021年7月29日
本棚登録日 : 2021年7月29日

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