だれも欲しがらなかったテディベア

  • 講談社 (1993年10月6日発売)
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感想 : 14
5

縫い目がくるって傲慢な顔つきになってしまったティディベアの、人生万事塞翁が馬な話。
生まれてすぐのぬいぐるみの性格は、顔つきによって決まる。
うぬぼれやで自分のことしか頭にないクマくんは工場の検品ではねられ、その後も捨てられるたびに「運よく」最悪の事態を逃れるけれど、誰も大事にしようとしない。

人形やぬいぐるみたちは見たり考えたり微妙に動いたりはするけれど、移動したり自ら運命を決めたりはできない。ただ流されて思うだけ。
そういうキャラクターなのに、「冒険」で「気づき」がある。うまいなあ。

第二次世界大戦直前のイギリスが舞台で、後半からは戦時に突入する。
持ち主が疎開したり、お父さんは「世界の裏側のビルマというところ」に出征したり、また別の子は「ドイツの宣伝ビラ」や砲弾のかけらを宝物にしていたりする。
懐かしくて手にとっただけなのに思いがけず今の興味に合ってた。
くずもの屋さん(映画チキチキバンバンの子供をさらう車を思い出した)や工場などの風俗も楽しい。

子供のころ、もしくはある程度おおきくなってから何度か読んだ。
内容をぱっと思い出せるほどじゃないけれど、あとがきにあった「これは子供のころに読んだ本のタイトル。装丁もしっかり覚えているのに内容を思い出せないので、自分でお話を書いた」という作者の言葉は覚えてる。
中身を読んだらああ読んだなと思い出せたけど、ワクワクだけじゃない面白さには初めて気がついた。
作者はクマくんの持ち主の子と同じくらいの世代。

同時代のティディベアといえば「オットー」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4566008002だけど、だいぶ違うなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書・絵本
感想投稿日 : 2012年12月22日
読了日 : 2012年12月22日
本棚登録日 : 2012年12月22日

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