悪左府の女

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  • 文藝春秋 (2017年6月9日発売)
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感想 : 20
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時は久安、12世紀の物語である。
名にし負う醜女、春澄栄子。
しかし当時の醜女というのは、小さな顔に二重の瞳、高い鼻、はっきりした頰の線(諸説あるようだが)。
つまり、現代でいう美女だ。
この栄子が政争に巻き込まれ、貴族社会から武家社会へと移り変わる時代を生きる。
女としての悦びを教え込まれ、悪左府こと藤原頼長の手のものとして使われ、そして……。

この時代のお約束、源姓と藤原姓ばかりだが嬉しいことに一覧、そして系図付きだ!
ここに手を挟みつつ読むと良い。
皇帝、上皇、武家、貴族が、力を求めて争う様は現代と似通う。
皆が自分の利益だけを求めて生きている。

それにしても平清盛の悪者っぷりたるや!
気持ちの良いほど悪者だ。
栄子の腕を掴み無理矢理にでも我がものにしようとする下りなどは許しがたいが「悪者」そのものだ。
醜女と言われながら多くの男性に心を寄せられ、特技を持って身を立て、誰かを傷つけ思い悩む栄子の姿は少女漫画ファンにもおすすめだ。
時代背景には取っつきにくい点もあるかもしれないが、面白い作品である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2018年1月12日
読了日 : 2017年11月29日
本棚登録日 : 2018年1月12日

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