『戦争と平和』は、暴れ出した筆を止められなかった小説だ。
「歴史は、原因の観念を退けて、すべてが同じようにはなれずにたがいに結びつけられている無限に小さい自由の全要素に共通の法則をこそ、探求しなければならないのである。 」(627P)
という信念は、しつこいぐらいに小説に反映されているのに、トルストイはそういうふうに哲理を直接書かずにはいられなかった。これは明らかに暴走というものだ。
それでも私がこの小説を愛さずにはいられないのは、あらゆる人間の典型を見出し、構築し、触れ合わせる、何もかも見えているぞというトルストイの目であったり、戦場から農村に至るまで、綿密に書き連ねられたその筆致のためであったりする。
戦場の風景は『セヴァストーポリ』の時代から大きく広がって展開されているし、農村の風景と、それに関わるニコライの仕事ぶりなどは『アンナ・カレーニナ』のレーヴィン家の萌芽が見られて面白い。
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- 感想投稿日 : 2019年6月22日
- 読了日 : 2019年6月22日
- 本棚登録日 : 2019年6月22日
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