ゆるす: 読むだけで心が晴れる仏教法話

  • 新潮社 (2015年4月24日発売)
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本棚登録 : 134
感想 : 17
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平易であることと、分かりやすさは必ずしも両立しない。
実践面から、作為なき心の持つ平穏性を回復する話だと思うし、苦を生じさせている他者との関係性、特にその根源となりうる過去の近親者から受けていた不当な扱いの構造理解を勧めているのだろう。
不安の起こっている状況を自覚し、瞑想と想像をもって自己の内部で追体験しつつ対象の人物と対話し、それをままならなかった現象として理解することで、心にかかる負の作用を無効化しつつ意味を予感させる携え方、「ゆるす」ということの必要性は分からなくもない。
しかし問題は、しばしば辱めを伴って受容した近親者からの不当な扱いの経験を、人は顕在意識から抹消したり、それが正当な他者評価だと断定してしまうことにある。
これらを単純に許すという能動的行為に結びつけるのは、ある規定を反作用的に規定し直すことでもあり、「ゆるす」ことができなければ楽にはなれない、「ゆるす」ことを通過しない安らぎは本来的でないという暗示が心を縛る、新たな禁止の苦を生んでしまう危険性がある。
魚川氏の翻訳ということで興味をもった本だったが、無理矢理にページ数を増やすような本文の組み方をされてしまうと、どうしても信頼性が薄れるような気がする読み手としての自分にも問題があって、得るものがあまり感じられなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宗教
感想投稿日 : 2017年1月3日
読了日 : 2017年1月3日
本棚登録日 : 2017年1月3日

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