フリーカメラマン宮嶋の従軍記ではなく(従軍したのはほんの一瞬)、アメリカの空爆が始まったアフガンの北部同盟とタリバンの前線までいかにしてたどり着き、いかにして脱出したかの記、といえよう。ただ、20年に及ぶ内戦の不毛さ、そして同様に今回の戦争の不毛さ、あるいは戦争の持つ普遍的な非人間性、といったものをただ行って帰っただけのことで体現している。これだけの体験で、このテーマで、そのうち東洋文庫にでも収録されてもおかしくないくらいの中身だと思う。しかし宮嶋の不幸は、ゴーストライター、あるいは共同著者といっていいのだろうか、元週刊文春編集者の勝谷誠彦のおかげで、週刊文春のキワモノ記事程度に成り下がってしまっているのである。差別的な言葉や、社会党や朝日新聞を揶揄する思慮も分別もない言葉、これらは読んでいる僕をいらだたせる。宮嶋の体験とは何の関係もないのに、週刊文春よろしくそれらを紛れ込ませることにどんな意味があるというのだろう。もったいない。これは宮嶋の著といわれているすべての作品に共通する。勝谷と袂を分かち、別のライターと組むべきだろう。
読書状況:読み終わった
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ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2010年8月22日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2010年8月22日
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