とうへんぼくで、ばかったれ

著者 :
  • 新潮社 (2012年5月22日発売)
3.29
  • (13)
  • (39)
  • (67)
  • (17)
  • (4)
本棚登録 : 334
感想 : 67
3

本当に些細な縁から中年男エノマタさんに勝手にほれ込んで、エノマタを追って状況までしてしまった吉田が、半ばストーカー行為をしながら不器用に不恰好に男との距離を詰めていく物語だ。
・・・・と書くと不気味だったりあるいは一途だったりする恋愛小説、というイメージなのだけれど、朝倉かすみに調理されるとなんともへんてこで不可思議で意味深いような話になるからおもしろい。
物語の筋よりは、それを彩る瑣末な事柄、たとえば「チョーダイチョーダイ」と貪欲なハムスター、「負けるとわかっているからってやらないのは弱虫」と大胆な果敢さを見せる吉田の無鉄砲、ささやかな幸せよりも何か違うものをと足掻く愚かさ、そういうものがふと胸に落ちて心に残る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 不思議なきもちになる
感想投稿日 : 2012年8月6日
読了日 : 2012年8月6日
本棚登録日 : 2012年8月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする