家主の事情でアパートを追い出されることになり、新居探しをしている友人(元彼?)が、「空き室がないけどここに住む!」と言い張る、古びた木造アパートの菊葉荘。
失業中の典子は、友人のためにアパートの住人を追い出して空き室を作ろうと、菊葉荘のスパイをはじめる・・・。
生身の人間が存在しているのにどこか非現実的な物語は、ひどく不安な心持にさせられる。
典子が身分を詐称しているうちに自分の居場所をなくしていく不安定さが、にじんでいて怖い。
仕事もなくして自宅にも帰らなくなって友人全員と切れてしまったら、自分が自分であった場所は夢みたいに消えてしまうんじゃないか、とちょっとぞっとした。人は簡単に拠り所を失える。そうなってしまったら、自分がいる「そこ」がどこまでが現実でどこまでが妄想なのか、わからなくなりそうだ。
地面だと思ってた場所がいきなりぽっかり穴を開けたような妙な心地になった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
なにか考えたくなる
- 感想投稿日 : 2007年6月24日
- 読了日 : 2007年6月24日
- 本棚登録日 : 2007年6月24日
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