強烈のひとこと。
だれも心を寄せられる人物がいない(笑) でも、それでもしばしのあいだ心のなかに人物が住みつくあの感じが残るところが、やはり名作たるゆえんなのだろうな。読書会向きというか。人の感想も聞いてみたい~。
読みはじめ、二種類の訳をいったりきたりしたのだけど、鴻巣さん版は、語りの枠のあり方(誰が語っていて、その人がこの物語のなかでどんな位置づけなのか)が、台詞回しだけでも明確に描き出されていて、すんなり物語に入れた。
考えてみれば、いちばん最初に登場するのが、縁もゆかりもない下宿人て、導入としてはかなり難しくないですか? でも、第三者がいないと語る動機がないからこうせざるを得ないのか。
しかしヒースクリフというのもなかなか難儀な人物で、ひろって育ててもらったけど(よかった)、その養父が亡くなってから徹底的にいじめられ(気の毒)、家を出てどこで何をしたのかわからないけど教養身につけて財産を作り(すごい)、嵐が丘に戻ってきてひたすら自分のいじめた者たちへの復讐をはかり(わかるけど何もそう執着しなくても)、キャサリンを激しく愛し、憎み(激しすぎんよ)……。
ヒースクリフが死んだあとの嵐が丘の、窓が開け放たれて風が通り、キャサリン・リントンとヘアトンが仲よく口げんかしながら会話したり勉強したりしている、あのおだやかな空気が、どろどろの闇世界のあとでは、なにか異世界というか、ファンタジーのようにすら感じられた。E・ブロンテ/C・ブロンテとひとくくりにするけれど、『ジェーン・エア』とはまっったく毛色のちがう作品ですごかったです。
- 感想投稿日 : 2023年11月10日
- 読了日 : 2023年11月10日
- 本棚登録日 : 2023年11月10日
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