短編集。第一話は一人暮らしが長かった主人公が甲斐甲斐しく世話をしてくれる奥さんにどうにも馴染めないというよくありそうなお話。悩みとして友達に相談するが、かみさんが浮気をする、買い物に狂う、毎晩求めてくる、そういうのが本当の悩み。早く子供を作れ、子供ができたらおまえなんか放置自転車だと切り捨てられる。毎日寄り道をしているのが奥さんにばれ、ついに夫婦喧嘩。喧嘩は徐々に白熱するも、言い合いをしながら何かほぐれていく。不快感はなく寧ろ高揚感さえ主人公は覚える。ぶつかり合ううちいつの間にか分かり合う劇的な瞬間が訪れる。6つの短編いずれもこういうどこの家庭にでもあるような問題、まさに我が家の問題が絶妙の切り口で掬い上げられている。温かな安らぎを感じた。最後の話の最後の場面。「いかんいかん息子たちがいるのに泣いてたまるか。」しかし視界はあっという間に滲んでしまった。読みながら自分の瞳も同じになっていた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2012年6月27日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2012年6月27日
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