聖の青春 [DVD]

監督 : 森義隆 
出演 : 松山ケンイチ  東出昌大  染谷将太  安田顕  リリー・フランキー 
  • KADOKAWA / 角川書店
3.35
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本棚登録 : 298
感想 : 59
4

将棋の持ち時間は皆等しくあるのに、命の持ち時間は皆違う…
子どもの頃から腎臓の病を患いながらも、自分の命を削るように将棋を指し続けた村山聖さん。
「聖の青春」がテレビCMで流れているのを見て、村山さんのことは存じていなかったが、羽生さんに似ている(将棋に疎い自分でも、なんとか存じておりました)役者さんを見て、そして2人の将棋を通じての魂のぶつかり合いを感じ、これはいつか見なければいけない映画だと強く感じました。
こちらの村山さん、「三月のライオン」の二階堂のモデルになっている方なのですね。
素直になれない、凄く凄く嫌なヤツじゃないか、村山聖…と初めは見ており、二階堂とは全然違う(モデルなだけなので、当然だが…、あと、三月のライオンでは二階堂が特に好きなキャラクターなのでムッとしてしまった)とイライラ、ハラハラしながら見ていました。
けれどあのセリフ…
「お前のどこが命賭けどるんじゃあ!」
「何が第二の人生だ」
あれは、自分の命に限りがあることを知っている悔しさを抱いているもので、あの瞬間から、これまでの自暴自棄で投げ遣りな彼の行動、言動のひとつひとつが、呆れるくらい悲しい思いを起こさせた。
初めての羽生さんとのサシ飲みで、ようやく同じ“命懸けで将棋を指している”と感じられる相手だからこそ吐き出せた素直な本音、
「僕には時間が無い」
「僕にはね、2つ夢があるんですよ」
自分の抱いた夢をどちらも叶えた羽生さんへの、強い憧れと嫉妬心…
「こんな身体じゃ無理なんです」
それでも、将棋は諦められなかった。
恋愛も、よくある青春も諦めてきた村山さんは、羽生さんと向かい合い、盤面で戦い続けることだけは、手放せなかった…

この映画放映の翌年、私は生まれて初めて将棋を人から教えてもらい、将棋の世界を知ります。
そして、三月のライオンと出会い、将棋の世界に身を置く人々の苦しみを知りました。
色々なことが、聖の青春を見るまでの間に起こっていました。おそらく、将棋の世界を垣間見ることが無ければ、こんなにも聖の青春を観ていて苦しくはならなかっただろうと思います。
私に将棋を教えてくれた人は、将棋を教えてくれた約5年後、息を引き取りました。
将棋を指すと、盤面上で相手と共にひとつの物語を描けるような気がします。三月のライオンでも、二階堂がそんなことを言っていました。本当にそうだと思います。
去ってしまった人とは、もう二度と共にひとつの物語を描くことはできない。一緒に、見たかった景色を見ることはできない……
羽生さんの嘆きはどれほどのものだっただろうか。
村山さんの愛読書がイタズラなKissだったのが、「未完の物語」という点で、村山さんと共通している気がします。
村山聖の将棋は、今も未だ未完なのです。
いつか、またいつか棋譜の読み方を私が理解できる日がきたら、そのときは…
村山聖 対 羽生善治という棋譜をひとつの物語として、読んでみたいと切に思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: レンタル・映画
感想投稿日 : 2023年11月3日
読了日 : 2023年11月3日
本棚登録日 : 2023年11月3日

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