台所太平記 (中公文庫 A 1-7)

著者 :
  • 中央公論新社 (1974年4月10日発売)
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本棚登録 : 250
感想 : 29
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戦前・戦中・戦後を背景に、千倉磊吉家に仕える「女中」たちの顛末をユーモアたっぷりに描く人間模様小説。
「初」「梅」「駒」「定」「小夜」「百合」「鈴」「銀」・・・エトセトラとこれでもかという具合に「女中」たちが登場し、それぞれのエピソードが面白く細やかに綴られるものだから、賑々しいことこの上ない。週刊誌での連載ものだったせいか、最初はユーモアな描写が主だったのが、次第に谷崎的エロスの世界が垣間見えるようになり、恋愛模様の描写も増えていくところは興味深い。(笑)これほど多数の「女中」を家に入れ、ある意味、育てあげる態度は、谷崎自身の男の性(さが)の顕れであるか。
ラストの大団円はとても微笑ましい。
終始、細やかでどこかユーモアを保持し続ける書きっぷりが楽しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説など
感想投稿日 : 2012年1月15日
読了日 : 2012年1月15日
本棚登録日 : 2011年10月22日

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