動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

著者 :
  • 木楽舎 (2009年2月17日発売)
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とても興味深く読みやすいので一気読みしました。
お馴染み福岡ハカセによる最新の生物・生命論を、一般人にもわかりやすくまとめたコラム本です。本題のごとく「生命」とは動的平衡=絶えず流動しながら均衡を保ち続けるものであると、様々な事例を引きながら興味深く論じています。
より興味深かったのは、記憶は脳がいま作り上げたものである、年齢を重ねるごとに時間や月日が経つのが早く感じるのは逆に体内時計=細胞の新陳代謝が遅くなっていくのに比し物理時間は変わらないから、人間の脳は乱雑なものにもパターンを見出そうとする、コラーゲンなど非・必須アミノ酸は集中的に食してもタンパク質は結局アミノ酸レベルに分解・吸収され別のタンパク質に作りかえられている、体重増加はシグモイド・カーブを描きゆっくり食べる方が太らない、などなどです。
また、病原体との戦いの章はスリリングでとても面白かった。ミトコンドリアは本来の細胞ではなく、別の生命体細胞を取り込んだ結果、共生しているものである(どこかで聞いたかもしれない)という話も興味津々でした。
デカルト?の生命機械論が発展して、ES細胞やら臓器移植が進展しつつある世の中で、筆者は生命の「動的平衡」による揺り返しをとても危惧されています。いわく、生命は分子の「淀み」であり、「身体」は環境が通り過ぎているだけだと。人間の身体は摂取したタンパク質等によって絶えず新しい組織や細胞に置き換わりその中で均衡を保っているんですね。
最後の象の話はとても感動的でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生物・生命・生体科学
感想投稿日 : 2012年4月9日
読了日 : 2012年4月8日
本棚登録日 : 2012年4月6日

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