「無鉄砲な若者の挑戦」という懐かしい表現が浮かんでくる。
後先顧みず興味のまま前に進んで時間を無駄なく思いっきり使う、あるいは思いっきり無駄な時間を使う事の喜びが伝わってくる。
ロンドンへ向かう途中の寄り道は香港、マカオ。
筆者はマカオのカジノで苦悩する。
目的達成のために自制心を働かせるべきか、思いのままトコトンギャンブルに入れ込んで、なるようになってみるべきなのか。たとえ旅が続けられなくなっても。
彼は気づく、ここでやめて帰るのは賢明な判断だ。
しかし自分が望んだのは賢明な旅ではない。中途半端な賢明さから脱して、徹底した酔狂の側に身をゆだねようとしたはずだ。
結果的に酔狂の側に身を委ねながら、ほぼ無傷で戻ってくる。
そして旅は続く。
著者は香港の屋台前で失業中だが日本のことに大いに興味を示す若者と気が合って話が弾んだ。彼は蕎麦を食べようと言い出し屋台のおばさんに作ってもらい二人で食べる。食べ終わると彼は屋台のおばさんに中国語で何か話しかけ、グッドバイと言い残すと料金も払わずに帰ってしまった。タカラれたと思ったが、実はその彼は翌日ありつけるはずの仕事で得られるだろう稼ぎをカタにしてツケでおごってくれたのだった。
著者は書いている、
「情けないのはおごってもらったことではなく、一瞬でも彼を疑ってしまったことである。
少なくとも、王侯の気分を持っているのは、何がしかのドルを持っている私ではなく、無一文のはずの彼だったことは確かだった」
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2019年6月19日
- 読了日 : 2019年6月19日
- 本棚登録日 : 2019年6月8日
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コメント 2件
おびのりさんのコメント
2022/02/15
moboyokohamaさんのコメント
2022/02/15