楽隊のうさぎ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2002年12月25日発売)
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★克久は最初の一音を(p.325)

無感情でいられるよう心を塗り固める左官屋とゆたかな感受性のうさぎが同居している克久をはじめ登場人物たちはさまざまな個性を持つ中学生でありパーツとしての音である楽器であり最初はバラバラだったものが単調で長い練習のなかしだいに全体の音を奏でられるようになっていく。新聞連載中に(いくつかの地方紙に使われていたようですがぼくはたしか神戸新聞でだったような気がします)あるていど読んでましたがちゃんと読んどきたいとは思ってました。まぶしいです。

▼簡単なメモ

【一行目】花の木公園にはうさぎが棲んでいる。

【相田守】小学校で同じクラスだった。《クサいを相田は営利な刃物みたいに使う。》p.41
【梓和代】トロンボーン。通称「アズモ」。
【有木】クラリネット。克久は刺股と思った。部長になった。部長連との打ち合わせで「まあまあ」と「だから」と「それから」と「どうしよう」と「困ったね」の五つしかしゃべれない。《有木は苦情を乾いたスポンジみたいに吸い込んでしまう部長だった。》p.152
【魚勝】魚屋のカッちゃん。克久の二歳年上で同じ保育園だった。森勉をカッコいいと言った。
【うさぎ】花の木公園で見かけるうさぎ。いつのまにか克久のココロに棲みついた。このうさぎは生であり活発な感受性だったろう。
【克久/かつひさ】主人公。奥田克久。市立花の木中学に入学した。小学校ではいじめられていたらしい。対抗策として《何も考えない。何も感じない。》(p.15)という方針で心のなかの左官屋が心を塗り固めた。吹奏楽部ではパーカッションに振り分けられた。彼の性分に合っていた。
【克久の世代】なかなか言うことを聞かない強い個性の持ち主が大勢いる。ふだんの年は一人とか二人とかしかいないのだが。それ自体はブラバンにとっていいことだがコントロールは難しい。先輩たちは態度がでかいと思っていた。
【川島】チューバ。克久は山賊のようだと思った。
【黒木麻利亜】パーカッションの一年上の生徒。「マア」と呼ばれている。ルイジアナに行く。
【小泉雅恵】パーカッション。祥子や克久よりすこし遅れて入部した。克久は彼女はあまり音楽が好きではないのかもと思った。あるとき部内でいじめられていると言い出したらしい。
【左官】克久の心の中には左官がいて外部との間の壁を塗っていく。ブラバンは石を積み上げていく石工だったりする。
【佐藤美和】コントラバス。
【指揮棒】消耗品だが神聖なもの。
【しょうちゃん】パーカッション。祥子。谷崎弓子と仲がいい。克久とともに打楽器パートに入った。最初からパーカッション志望で彼女がなにか叩くとあたりが明るくなる。《しょうちゃんの容姿は、人間が胸の中に隠している悪意や嫉妬を簡単に引き出してしまう》p.71
【真剣】《うまい演奏とか深い演奏はこれからもできるけど、こんな真剣な音はきっとこれが最後だと。》p.151
【鈴木】オーボエ。有木の次の部長。
【瀬野良子】克久二年のときのパーカッションのパートリーダー。とてものんびりしている。
【宗田】トランペット。克久の一年上。克久は知能犯っぽいと思った。トランペットを手にしていないときは冷静沈着。
【田中】フルート。ピアノも弾ける。親と森勉が言い合いになって退部するかもしれない。克久と親しくなった。
【チューバ】地の底から沸き上がる怒りのような音。
【長井恵理】ホルン。
【花の木中学吹奏楽部】克久入学時では二年連続で全国大会出場を果たしていたものの三年に一度あるという伝説のある深刻な部員不足に悩んでいた。学校にいる時間が最も長い生徒たち。
【久夫】克久の父。中学生は身体を鍛えた方がよいので運動部に入るべきだとなんとなく考えている。自分はバレー部に入っていたが母親からは団体競技は他人の責任を負わねばならないからダメと言われていた。自分がバレー部だったとは誰にも言わない。
【一人】《一人きりというのは、気持ちがいい。》p.40
【広田】森勉の友人らしい。克久がティンパニを教えてもらう。
【藤尾】パーカッションのリーダー。克久の適正を見抜いた? いつも背筋を伸ばして澄ましている。部員全員らお師匠さんと呼ばれている。ちょっと変人的要素があるらしい。
【部長連】たぶん吹奏楽部の中のパートリーダーたちのことだと思う。
【星】サックス。
【本当】《百合子も久夫も克久も、ちょっとずつだけ、ほんとうのことを言わないでいた。》p.264
【町屋智弘】チューバ。
【丸川繁】パーカッション。克久の一年下。通称「マルちゃん」。
【ミズ・スーザン】AET。本業は音楽でサックスを吹く。
【水野良枝】トロンボーン。
【路村】トロンボーン、ユーフォニアム。通称「ミンミン」。
【森勉】吹奏楽部顧問。通称「ベンちゃん」。廊下をとても速く歩く。眉毛でじろりと睨む。
【谷崎弓子/やざき・ゆみこ】克久に「おはよ」とあいさつした。
【山村正夫】トランペット。克久と同学年。しょうちゃんと谷崎弓子と山村正夫は陽気なトリオ。
【百合子/ゆりこ】克久の母。陶器の店を持つという夢がある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 好感あり
感想投稿日 : 2022年5月20日
読了日 : 2022年5月20日
本棚登録日 : 2022年5月20日

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