魔球 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1991年6月4日発売)
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本棚登録 : 7048
感想 : 531
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こないだ『変身』を読んで、なんだかあんまりだなあ、という印象
だったので、もう一冊手にとってみました。
野球サスペンス、ということでチョイス。

これは、『変身』を読んだときにも思ったのだけど、非常に親切な
エンターテイメント作品だ、と思った。
図まで交えた親切な説明や文体、わかりやすく登場人物の性格を示して
くれるエピソードの挿入、少しずつ消されていく犯人の可能性。
章ごとに、視点を変えて犯人像が絞れていくその話の運び方、技術の
高さと構成力の見事さは、非常に理知的である。

しかし一方で、解説で賞賛されているほど、この作品が青春小説として
優れているかはどうかは、にわかに判断しがたい。
若者の「何」をテーマにしているかが、僕にはわかりにくかった。

また時代設定も、なぜこの時代にしたのか。
高度成長期における貧困層を題材にしたのかもしれないが、別にそこに
必然性は感じないなあ、という印象である。
なにかを訴える力は弱く、作者の世界観を提示するわけでもなう、歴史に
残る作品ではないが、エンターテイメントとして十分な力を持った作品
といえるのではないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2006年1月15日
読了日 : -
本棚登録日 : 2006年1月15日

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