風をつかまえた少年

  • 文藝春秋 (2010年11月19日発売)
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感想 : 66
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 アフリカのマラウイの14歳の少年が、自力でつくった風力発電。それは、貧困のため、中学校に通うこともできなくなったウィリアムが、MTTA(マラウイ教員研修活動)が小学校に作った、小さな図書館の1冊の本との出会いがきっかけだった。
 物見高い見物人の野次が飛び交う中での、実験。風車が回り、ウィリアムの持つソケットが輝き始めたとき、見守る人々から歓声が上がった。そして、それは、貧しい国の大きな一歩となっていく。
 1人の少年が、人々を、国を、そして世界を動かすまでの物語

 本当に痛快で、魂が震えるような物語(実話)でした。しかも、ウィリアムの手記という形で書かれているので、とても、読みやすく、一息に読めてしまいます。
 サクセスストーリーであるのは違いないのですが、風車つくりばかりでなく、半分はマラウイの子どもたちの生活や、風習について。日本では考えられないようなことが、平気でまかり通ることに驚いたり、ショックだったり……。特に、干ばつのために、人々が苦しんだ飢餓の様子には想像を絶するものがありました。
 一方、幼いウィリアムがお父さんから聞いた物語や、お父さんの半生、自然豊かな日々の中での子どもの遊びなどは、読んでいても楽しく、どことなく懐かしさも感じました。

 訳者の田口さんや、池上さんの解説もよかった。「知識は力なり」いい言葉ですね。もちろん、図書室の1冊の本がきっかけで、ウィリアムの人生が大きく変わったという事実には勇気づけられます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2011年8月12日
読了日 : 2011年8月12日
本棚登録日 : 2011年8月12日

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