形態の生命誌: なぜ生物にカタチがあるのか (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社 (2011年7月1日発売)
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感想 : 17
3

(2011.11.16読了)(2011.10.20借入)
神さんが興味を持って、読みたいというので図書館から借りてきました。3週間たっても読み終わりませんでした。どんどん読める本ではなさそうです。
僕も読んでみたかったので、神さんに中断してもらって、読んでみました。
「へんないきもの」早川いくを著、のような本を期待していたのですが、違っていました。植物や動物について普段、自分の目で直接見たり写真や映像で見たりしているので、結構見て知っているように思っているのですが、この本を読んでみて、気がつかなかったことがいくつもあってびっくりしました。著者は、形態学の専門家ではないそうなので、今度はぜひ、形態学の専門家の本を読んでみたいと思います。
この本の中で、ゲーテの本が何度も引用されています。
「ゲーテ形態学論集・植物篇」ちくま学芸文庫、2009年3月
「ゲーテ形態学論集・動物篇」ちくま学芸文庫、2009年4月
「若きウェルテルの悩み」や「ファウスト」を書くだけではなく、色んな研究をしていたようです。

この本の章立ては、以下の通りです。
第1章、イノチのカタチ―体節と左右相称
第2章、イノチの小部屋―細胞骨格の構造
第3章、不都合なカタチ―食道と気管
第4章、口のカタチ―タテグチかヨコグチか
第5章、不動の動のカタチ―植物の「原型」
第6章、数学的なカタチ―黄金比と螺旋
第7章、哲学的なカタチ―生成のアルゴリズム
第8章、模様のカタチ―チューリング・パターン
第9章、イノチをつくる散逸構造―ミツバチの巣の謎
第10章、カタチをつくる衝動―カメは甲羅を脱げるのか
第11章、逸脱したカタチ―天使の翼と昆虫の翅
第12章、カタチの原型―進化と発生のリズム

●かたちを保つ(19頁)
約4億年前、大気上層にオゾン層ができて紫外線が遮蔽され、生物の陸上進出が始まった。ただ、陸上には紫外線だけでなく、重力という問題もある。水中にいるうちは浮力の恩恵を享受できたが、陸上では自力で重力に抗し、自分の「かたち」を保たねばならない。その支持構造として骨格が使われた。
●寒冷化の暴走(25頁)
何らかの理由でいったん両極が寒冷化すると海も冷たくなる。寒冷化を防ぐのは二酸化炭素CO₂による温暖化だが、冷たい海ほどCO₂を大量に吸収するので、寒冷化が止まらなくなる。寒冷化の暴走だ。もちろん、逆のケース、いったん温暖化したら海がCO₂を吐き出すので温暖化が加速するという熱暴走シナリオもあり得る。
●生物の属性(31頁)
生命や生物を特徴づける三つの属性
代謝:体を作って維持すること
複製・増殖:増えること
代謝や複製の単位が細胞膜で包まれていること
●食道と気管(50頁)
食道と気管のどちらが本線かと言うと、それは食道である。気管は後からできた支線である。そもそも動物とは「食べる生き物」である。
●昆虫類の食性(67頁)
昆虫類の食性は「噛む」と「吸う」に分けられる。噛むものはタテグチでムシャムシャ食む。吸うものはタテグチが対合した口吻をストローのように使って、樹液や蜜液を吸う。そこから派生したのが「刺す」もので、蚊は口吻を針にして他の生物に刺し、その体液や血液を吸う。
●生物の本質(81頁)
生物の本質は「喰って殖える」ことだと思う。喰うのは「個体の維持」のため、殖えるのは「種の維持」のためだ。
●ハテナ(82頁)
岡本典子氏が2000年に和歌山の砂浜から発見し、2005年に米国のサイエンス誌に発表した「ハテナ」という生物は、文字通り「はてな?」だ。これは単細胞の植物(藻類)で、他の娘細胞藻類と同様に分裂して二つの単細胞に分かれる(伝統的に「娘」と呼ぶことになっている)この時、一方の娘が葉緑体という光合成装置を継承し、他方は何ももらえず無色になって光合成不能、モノを食べるようになるというのだ。つまり、分裂すると一方は植物、他方は動物になる!?
●花(96頁)
植物の花のハタラキはただ一つ、殖えること。すなわち生殖である。
●漱石の呪い
科学はhowに答えるものであり、whyには答えない
●カメの甲羅(171頁)
カメは甲羅を脱がない、いや、脱げないというべきか。カメの甲羅はもともと肋骨だからである。肋骨が横方向に扇状に広がったものなのだ。
●眼の誕生(206頁)
いまから5億4300万年前のカンブリア紀に突如として「眼」という視覚器官が誕生したことが生物界、とくに動物界のカタチを爆発的に多様化させた原因であるという
●防御(214頁)
「眼の誕生」以前の生物は、攻撃的な捕食に曝されなかったので、特に守りを固める必要がなかった。しかし、眼が誕生してから世界が一変し、攻撃からの防衛が必要になった。一つは甲殻化であり、もう一つは俊敏さである。甲殻化は外骨格を作り、俊敏さは内骨格を作った。
※気になる参考書
「人体 失敗の進化史」遠藤秀紀著、光文社新書
「人口論」マルサス
「カメのきた道」平山廉著、日本放送出版協会
「眼の誕生」パーカー著、草思社

☆関連図書(既読)
「へんないきもの」早川いくを著、バジリコ、2004.08.18
「ウソつきな生き物」来栖美憂著、PLAY BOOKS、2005.07.15
(2011年11月17日・記)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生物
感想投稿日 : 2011年11月17日
読了日 : 2011年11月16日
本棚登録日 : 2011年11月14日

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