人質の朗読会

著者 :
  • 中央公論新社 (2011年2月1日発売)
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 反政府ゲリラの人質となった日本人の団体ツアー客の、夜毎の朗読会。それぞれ、自分の人生の中の重要なエピソードを書き起こして朗読する。
 それぞれの話が、不思議な出来事やありきたりでない出来事を題材にしていて、語り手の人生において深い意味を持つものばかり。そして、各話の最後には、語り手の死亡時の肩書と旅行に参加した経緯が添えられている。それが、「この出来事があって、この人なりにしっかり人生を送って、ここに来たのだな」という、納得というか安心のような気持ちを抱かせる。一方で、彼らが亡くなったということは冒頭ですでに明記されているため、切ない気持ちにもなる。
 この、「語り手=人質たちは全員亡くなった」という設定があるため、読み手は語り手の人生と出来事の関係に想いを馳せることになる。出来事が、ただの珍しい出来事に止まらず、人生の中での位置を持った出来事になる。各話の内容自体もよく書けているのだけれど、全体としての設定もちょっと美味しいな、と感じた。
 好きな話は「やまびこビスケット」「B談話室」「ハキリアリ」。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般文学(国内)
感想投稿日 : 2018年1月8日
読了日 : 2017年12月24日
本棚登録日 : 2018年1月8日

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