てのひらの中の宇宙

著者 :
  • KADOKAWA (2006年9月1日発売)
3.30
  • (11)
  • (22)
  • (52)
  • (9)
  • (3)
本棚登録 : 188
感想 : 45
4

ああ、この作品は良かった。琴線に触れるお話だった。この雰囲気は…大昔に読んだ『パパ・ユア・クレイジー』か『考えるウォークマン』って感じ。父親が子供たちに投げかける眼差しの優しさが、とても心に染みた。 物語の設定は「となりのトトロ」みたい。母親がガンを再発して入退院を繰り返す間、残された父親と子供二人の生活を描いてます。 5歳のミライが「え?ホントに5歳?とてもじゃないけど、そうは見えないってば!」聡すぎるほどよく出来た子供なのが引っかかるけど、身近な生態系から生命の歴史、フラクタル、陽子中性子、そして宇宙へと世界に対して開かれていき、ぐんぐん自分の世界を広げていくようすに、つい感動して、胸を熱くしてしまう。漠然とした死の予感が家族それぞれの胸の中にあり、「死」が媒介となって世界が開かれていくというのがやるせなくさせるけど、こんな風に大切な人の死や宇宙の死について、思いを馳せたことがあったなあと、大昔の自分を思い出して、きゅんと胸が切なくなった。 「家族の物語から絵本化」で途中挿入される「巨大カメと無限の散歩」が、物語に絡んでくるのもいい感じ。まんまインド神話だ〜! 綿々と続いてきた命の連鎖について、深く考えさせる物語。もしかしたら川端さんの実体験が反映されてるのかなと、思いたくなる。私は好きですね、この話。やっぱり川端さん、チェックしようっと。(2006.10.7読了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2006年9月14日
読了日 : -
本棚登録日 : 2006年9月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする